産業品事業

写真:執行役員 森山 圭治写真:執行役員 森山 圭治

社会課題の解決を使命とし
小さいからこそきらりと光る
事業部であり続けます。

執行役員
ハイブリッド事業本部長

津崎 正浩

巻き返しを図って利益目標を達成した2023年度

2023年度はハイブリッド事業本部としても大きな一歩を踏み出せた年でした。動力費、原材料などあらゆるものが高騰した厳しい事業環境でしたが、営業・技術・製造・管理部門の努力が実った結果、巻き返しの第一歩として6年ぶりに利益目標を達成できました。
そのような中、2024年元日に能登半島地震が起きました。亡くなられた方、被災された方には心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。地震後は当社も現地に入り、震度6弱以上が計測されたエリアを中心に被害の状況を調べました。その結果、当社の制振ダンパーを導入いただいていた建物は全壊・半壊ゼロということがわかり、多くのお客様から感謝の言葉をいただきました。阪神・淡路大震災、東日本大震災という2度の大地震を経験した当社にとって、制振ダンパー事業には人の命と資産を守る社会的意義があるのだと、あらためてその重要性を感じています。

※ 2024年6月4日時点 当社が把握している範囲において

売上収益

売上収益

事業利益

事業利益率

※ 事業利益=売上収益−(売上原価+販売費及び一般管理費)

構造改革の前進 -事業撤退と事業売却について-

構造改革については、中期計画において2025年までに目途をつけるという方針のもと、昨年は「ガス管事業の撤退」、「欧州の医療用ゴム製品の製造・販売子会社を売却(Lonstroff AG の全株式の譲渡)」という2つの意思決定をしました。前者は家庭用ガス管の国内市場が縮小傾向にある中、経済性を維持しつつ、お客様にご満足をいただける品質を確保した商品を安定的に提供し続けることが難しいという理由であり、後者は世界的な新型コロナウイルス感染症拡大の影響による生産性改善の遅れや原材料の高騰による収益性悪化により、短期的な収益性の改善が難しいという理由です。社長の山本も申し上げているように、経営が担う大きな役割の一つは、努力が成果に結びつく事業の選択と、社員一人一人が輝く仕事を創出していくことです。今後も社会課題を解決するという軸をぶらさず、利益率と資産効率を求めながら構造改革を着実に進めていきます。

制振ダンパー、医療用ゴム製品の技術と普及拡大

当社にはタイヤメーカーだからこそできる高度な技術があります。その一つが「高減衰ゴム」を利用した制振技術です。世の中を見渡してもこれ以上硬い高減衰ゴムはないというほどの特性を持ち、地震や風のエネルギーを吸収します。形状を小さくすることでより低コストを実現することもできます。この高減衰ゴムを使った制振ダンパー「MIRAIE」は、揺れ幅を大幅に低減※1、90年間メンテナンスフリー※2、繰り返しの揺れに強い、当事業部が誇る競争力の高い商品です。

※1 2017年1月京都大学防災研究所でのMIRAIE軸組を使用した実大実験の結果による

※2 当社による促進劣化試験の結果より(高減衰ゴムダンパー部分において)

制振ダンパーは国内の住宅、ビル、橋梁を主に展開していますが、現在、国内で新築される木造住宅への制振ダンパーの普及率は約20%にとどまっています。人々の命と日々の安心を守るために、日本国内の建物の50%以上に普及させることを目指すとともに、アジアエリアを中心とする活況な海外ビル市場にも力を入れていきます。また、当社の技術は熊本城、東本願寺といった歴史的建造物にも採用されています。今後は寺社仏閣等の重要文化財の保全や、今の能登半島地震で大きな被害を受け、既存住宅へのリフォーム適用の拡大を進めていきます。

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医療用ゴム製品事業にもタイヤ事業で培った高度な技術が強みとして活かされています。不純物の排除を徹底するなど圧倒的に高い品質を求められる事業領域であり、タイヤの研究施設などのリソースも使い、研究チームが5〜10年をかけて製品開発に取り組んでいます。
医療用ゴム製品は人々の健康と生命に直結する、非常に意義深い事業です。さらなる成長のために製品の高付加価値化と生産能力の拡大に向けた取り組みを優先的に進めています。

事業を通じた社会課題解決への貢献にむけて

ハイブリッド事業本部では社会課題を解決し、人々に安心・安全・快適を提供するというビジョンのもと、OA機器用ゴム部品、手袋、建築フロア、防舷材、スポーツ人工芝などの事業を展開しています。各商材で技術的な強みを活かしDX、AIやサステナビリティの観点を取り入れながら、安定的な収益確保を進めていきたいと考えています。
また、ゴム技術を活かした新分野への進出も考えています。ハイブリッド事業本部はこれまでその時代に求められるさまざまな製品を開発・製造してきました。長い歴史と、果敢にチャレンジするカルチャー・DNAを持ち、社会課題を解決する使命が当事業部にはあるのです。
今後注力したいのが商品力の強化です。今年、差別化した商品でお客様に貢献することを目的とした「ヒット商品プロジェクト」をスタートさせました。お客様の期待を超える付加価値の高い商品を上市していきます。

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「信頼×やり抜く」をテーマに組織改革を継続

事業を持続的に成長させていくためには、組織と人への投資が大切です。社員のやる気がいちばんの経営資源であると考えています。昨年、事業部の中に健全な組織風土づくりと人材育成を推進していく専門チームをつくりました。良いことも悪いことも全てオープンにしていこうという方針のもと、階層別研修、チームビルディング等の取り組みを行っています。そのような愚直な取り組みの積み重ねがじわじわとマインドを変え、日常の業務が変わっていくと確信しています。
今年は特に「信頼」をテーマに掲げています。組織の中にはいろいろな課題がありますが、解決のための武器になるのがやはり信頼です。今年からマネジャー層に向けて、日常の仕事やマインドが変わるまで「信頼」について考え抜く研修を始めています。信頼というのは後天的に身につけていけるスキルだからです。
ハイブリッド事業本部のお客様は多岐にわたり、業種も専門的です。そのような中、どう差別化していくのか。住友ゴムグループの信頼力、ネットワークと情報力、イノベーションの3つの掛け合わせで勝負していきます。タイヤ事業やスポーツ事業ではできない分野での社会課題の解決に取り組み、企業価値を上げていく「小さいからこそきらりと光る事業部」であり続けたいですね。