人事担当役員メッセージ

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写真:井川 潔写真:井川 潔

社員と対話を重ねながら、
組織体質の改善、
業務改革を推進

執行役員
人事総務本部長

井川 潔

組織づくりに重要な「相互尊重」「挑戦」「エンゲージメント」

住友ゴムグループの企業理念体系である「Our Philosophy」では、全従業員が心に留めるべき大切な価値観として「住友ゴムWAY」を定めています。「住友ゴムWAY」は「信用と確実を旨としよう」「挑戦しよう」「お互いを尊重しよう」の3つから構成されています。これらのうち組織づくりの観点から、「お互いを尊重しよう」を最も重視しています。いわゆる「相互尊重」であり、関係している相手の気持ちや状況を察して考え、行動することです。社員それぞれがこのような姿勢を持つことで、組織における人間関係が良くなり、人同士のつながりが強化されることで、組織の生産性、仕事の品質がともに向上します。また「住友ゴムWAY」の価値観のひとつである「信用と確実を旨としよう」の実現にもつながります。
加えて、組織づくりには「挑戦しよう」も大切な価値観です。当社の「Purpose」の言葉の中に「未来をひらくイノベーション」とありますが、イノベーションには挑戦が不可欠だからです。
ただし、イノベーションは、何もない状態から何かを発明することだけではなく、1を10に、10を100にといった、スケールを大きくすることも重要だと捉えています。いろいろなアイディアを組み合わせて創り出すことがイノベーションなのです。このようなアイデアの組み合わせは、先ほど申し上げたような、相互尊重が大切にされている職場で生み出されやすく、一気に加速していくものだと思います。
先日、良い組織を考える上で、モデルになる例に遭遇しました。当社の各工場では、安全品質の向上を目的とした活動を展開しています。国内では四半期に1回、各工場を訪問して、その取り組みの報告を受けるのですが、あるチームの報告がとてもすばらしかったのです。発表者の態度や発表の内容から、その職場の人間関係の良さや、発表者自身が職場に所属していることに大きな誇りをもっていることを感じ取ることができました。
この出来事から、良い組織には、組織に愛着を持ち、当事者意識をもって組織の課題を解決しようと行動する、エンゲージメントの高い人材が不可欠だと改めて実感しました。そのような人材がリーダーシップを発揮して、ありたい姿に向かって課題を設定し、周囲を巻き込んで解決にあたっていくことが、理想的な組織のありかたではないでしょうか。

組織体質改善と業務改革を両輪として

当社は以前から、「挑戦しづらい環境」「古いリーダーシップスタイル」「コミュニケーションの壁」「低い生産性」といった組織課題を認識していました。そこで、当社の組織としての健康度をより詳細に可視化するべく、2020年から“組織体質アンケート”を毎年実施してきました。
これまで生産部門の回答率が低かったため、ものづくりの企業として、生産部門も含めた改善を実施するために、もっと実態を示すデータが欲しいところでした。生産部門の回答率が低い原因を調べると、アンケートに回答する時間が「生産コストの上昇につながるムダな時間」と認識されてしまい、妨げになっていることも原因の一つであることがわかりました。そこで2023年、回答時間を工場ごとに予算化しました。そうすることで、生産部門も含めたアンケートの回答率は、以前から大幅に上昇し全体の9割以上に達しました。
その結果を分析すると、職場によってスコアの高低に大きな差があることが明らかになりました。そこで、各拠点の工場長と生産担当役員、人事総務本部のプロジェクト事務局が、調査結果のスコアを読み解く会議を開催しました。改善策については、まずは職場の課題に自分たちで向き合い自主的に課題解決をしてもらいたいというスタンスです。これから、各職場で自律的な改善が図られるものと期待しています。
さらに、部門を問わず全社で対応すべき課題については、2020年からプロジェクトの伝道師として“タスクフォースアンバサダー”を各職場から選出してもらい、組織体質改善の動機付けやベクトル合わせを実施してきました。総数として50名を超えるメンバーが担ってくれました。このアンバサダーは、2024年から“チェンジリーダー”へ名称を変更し、担当役員、部長と連携して、各組織で課題を解決するリーダー役として活動しています。
また、業務効率の向上を目的とした“BX(ビジネストランスフォーメーション)本部”を発足させ、私が初代の本部長に就任しました。業務プロセス改革により生産性が上がり、業績も向上すれば、社員のエンゲージメントも上がります。このように組織体質改善、業務プロセス改革の両輪を回すことで、組織・人材・業務の間で好ましい循環が生まれてくるようにしたいと思っています。

「マネジメント層のキャスティング」をはじめとする課題

組織体質改善に向けた取り組みにおいては、4つの課題があります。第一に、部課長クラスをはじめとするマネジメント層のキャスティングです。マネジメントの仕事の一つとしてはメンバー一人ひとりを見た上で、その人材のやる気が出るテーマを設定して、コミュニケーションをとることが求められます。そういった役割に適した人材の選択、任免が非常に重要だと考えています。
そこで、部長クラスの任免については、該当部署と人事担当部署だけではなく、人事委員会(社内取締役で構成され、重要ポストの人事などを検討)にて議論して決定しています。もちろん、その人材の360度フィードバック結果と、組織体質アンケート調査結果のスコアのほか、社内での評判を勘案して決めています。課長クラスについては任免のフレームを検討中です。人事考課に360度フィードバック、組織体質のスコアを組み合わせて、担当役員と人事が膝詰めで任免を検討する必要があると感じています。

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第二の課題は、第一の課題と関連しますが、女性のキャスティングです。多様な属性、働き方の社員が生き生きと働ける会社になるためにも、女性リーダーの創出や登用に取り組まなければなりません。DE&Iグループと連携して、女性管理職の任用を検討しているほか、人事委員会においても「女性の次世代人材は誰?」というテーマで議論を進めています。
第三の課題は、海外人材のフォローです。組織体質を改善する活動は国内からスタートしており、海外は手つかずの状況でした。今後は海外人材の現状を把握して、課題の設定に取り組む計画です。また、当社は経営トップと社員が直接対話する場である「語る場」を開催していますが、2024年は国内だけでなく、ブラジルを皮切りに海外の拠点へも拡大して展開しています。海外では「Our Philosophy」について関心を持つ意識の高い社員が多く、彼らと質の高い対話を行うことで、現場と会社との一体感を高めていきます。
第四の課題は、経営におけるターニングポイントの事例を形式知化することとその活用です。昨年、医療用ゴム事業、ガス管事業の2事業から撤退しました。主管の事業部では、撤退に至った経緯や原因を把握していますが、直接関わっていない部署では、そうはいきません。2事業をなぜ手放すことになったのかを明らかにして、会社の組織知として活かすべきと考えています。
この施策については、まず、執行役員の間で議論し、事例の中から組織の問題や仕事の進め方などの中でも、特に私の責任範囲である人材・組織に関わる課題を明らかにしたいと思います。その結果を素材として、管理監督者の研修プログラムに織り込み、次世代経営人材向けの研修等に役立てることを検討しています。

組織・人材における課題解決のため、魂をこめる

企業には、ゴーイング・コンサーン、つまりずっと存在し続けるという、継続企業としての前提があります。継続するためには、長期間にわたって利益を上げ続け、社会にその価値を認められる存在であらねばなりません。ステークホルダーの皆さまに対して短期・中期の業績等の説明責任を果たしながら、10年先、20年先、50年先、さらにその先の未来まで見据えて、時間軸を長くとって経営の判断ができる会社でありたいと思います。
その実現を支える組織を確立するためにも、組織や人材における課題、その課題の本質についてとことん考え、議論することが求められます。さらに、課題解決のためのアクションプランについて、その実施者へ意義を説き続けることも重要です。これらをはじめとする取り組みに魂をこめて、社員と対話を重ねながら、組織体質改善と業務改革を推し進めていきます。