財務担当役員メッセージ

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2025年までの構造改革を
確実なものとし、
より強固な財務基盤の
確立を目指します。

取締役
常務執行役員

大川 直記

外部環境と構造改革が相まって好業績を達成した2023年度

2023年度は前中計の目標未達に対する「猛烈な反省」の上に立って経営に臨みました。利益率を重視した効率性の高い経営を追求した結果、期初の事業利益公表値である350億円から、最終的に777億円とすることができました。
その要因としては、海上運賃がコロナ禍前の相場に戻ったことや、中国などのサプライチェーンが安定し原材料価格が落ち着いたことなど、外部的な影響に加えて利益率重視の方針から販売数量にかかわらず、採算性の悪い製品の取り扱いを止め、利益率の高い製品を中心とした販売施策を加速させた点が奏功しました。外部環境と構造改革が相まって好業績につながったといえます。
タイヤの売価政策でも成果を挙げています。自動車メーカー様向けの新車用タイヤでは価格連動制という契約の中で、原材料価格の変動リスクをカバーしました。一方、整備工場様およびカー用品店様など向けの市販用タイヤにおいては、特に米国市場でFALKEN(ファルケン)ブランドの「WILDPEAKA/T3W(ワイルドピークエーティースリーダブリュー)」といったSUV用製品について、強力なブランド価値や高い品質のもとで値引き競争に巻き込まれることなく、顧客に高い信頼を得てビジネスを展開することが出来た点も利益の改善に寄与しました。
また、社内では従業員一人ひとりの顔つきが明らかに自信に満ちたものとなっていることを実感します。これは財務面の数字には表れない組織としての地力の証左ではないかと考えています。株主還元が重要であるのは当然として、従業員の日々の奮闘成果に対して、適正に分配することに努めたいという思いから、2024年春のベースアップでは組合要求額に対してプラス2,000円となる12,000円の回答としました。

スポーツ事業の事業利益は過去最高の125億円

タイヤ事業以外も収益性の改善が進んでいます。
スポーツ事業では、ゴルフ事業については契約選手の活躍効果もあり、北米・韓国で順調に販売を伸ばし、2023年12月に発売したゴルフクラブの新製品「XXIO13(ゼクシオサーティーン)」が好調な滑り出しとなりました。このほか、テニス事業についても利益率が改善した結果、スポーツ事業の事業利益が過去最高の125億円を達成しました。売上高事業利益率が約10%と高い成果を上げた点も見逃せません。
更に、産業品事業についても構造改革が進んだことから今後の収益改善の道筋が見えてきた状況です。主力製品である制振ダンパーについては、能登半島地震において家屋の倒壊防止に大きく寄与したことが報告されております。今後起こりえる地震への備えとして普及が進むものと考えます。

構造改革により4年間で400億円超のキャッシュを創出

当社では、2020年から組織体質と利益基盤強化の経営基盤強化活動「Be the Change」プロジェクト(以下、BTC)を推進しています。その成果として毎年100億円規模のキャッシュを創出し、4年間で400億円超を稼ぎ出しました。この結果、2023年度の事業利益は777億円となったとともに、フリーキャッシュフロー(以下、FCF)は過去最高の1,000億円超となりました。2022年度がFCFマイナスだったことを考えると、「収益力の住友ゴム」復活に向けて自信をつけた一年でもありました。
もちろん、FCFが過去最高を更新し、量から質への経営の転換に向けて弾みがついてきたのは間違いありませんが、構造改革は道半ばであり、特に北米タイヤ事業という一丁目一番地の課題に対して、真正面から立ち向かっていく覚悟です。そして、2025年までに構造改革をやり切ります。その過程では多額のキャッシュアウトが必要な事態が生じないとも限りません。まずは構造改革を優先させることで利益基盤を確実なものとして、成長戦略を実行した後、株主、投資家の皆様に対して還元してまいりたいと考えます。
今後の設備投資については、構造改革・成長戦略をやり切る中でどの様な選択肢とするかで投資のアロケーションが変わってきます。これから先の5年、10年の行く末を左右する内容だけに経営陣でしっかり議論して、結論を出す考えです。

設備投資、減価償却

設備投資、減価償却

キャッシュフロー

キャッシュフロー

2025年までの構造改革を確実に成し遂げていく

2025年までの構造改革が正念場を迎える中で、現在、米国工場の課題を含めて、各事業にKPIを設けた上でROICなどをモニタリングしている段階です。本年の統合報告書発行時点では未定ですが、事態に変化が生じた場合には遅滞なく皆様にお知らせいたします。
誤解の無いように申しますと、米国工場が構造的な課題を抱えている一方で、北米タイヤ事業は全体として好調に推移しています。この点を解決することで、利益率は大幅に改善するものと考えます。今後、北米市場について懸念点を挙げるならば、2024年秋の米国大統領選挙です。この点についてはリスク評価を慎重に行いつつ、それぞれのケースに応じた施策を慎重に検討しているところです。
加えて、コロナ禍を背景とした海上運賃の高騰のような事態が今後発生しないとも限りません。中長期的にリスクを回避していくためには、地産地消の観点から販売テリトリーに近いところに生産拠点を設ける必要があります。こうした中期的課題についても検討を進めています。

ERPの導入によりサプライチェーンを短縮化

BTCの成果によってキャッシュが増加していると申しましたが、その流れを更に確かなものにしていくための施策が、DXを用いたグローバル・サプライチェーンの短縮化です。従来、米国からの生産発注の情報が東南アジアの工場に届くのに約1カ月かかっていました。それを業務改善により1週間程度に縮めましたが、新たにERP(統合基幹業務システム)を導入し、極力リアルタイムに近いリードタイムに短縮していく計画です。これによって無駄な流通在庫を削減出来る上、市況の変動に応じて工場の稼働状況を臨機応変に変更することで材料などの在庫も削減することが可能となります。
なお、キャッシュ・コンバージョン・サイクルについては、2019年時点では当社が国内タイヤ業界で最下位でしたが、2022年にはトップとなりました。2023年は更に2位と10日以上差をつけて首位となり、資本の回転が改善し、より安定した資金繰りとなっています。

構造改革の先を見据えて次の成長戦略を策定

中期計画の今後の道筋については、構造改革で取り得る選択肢により短期的な業績が変動するという不透明な形でしかお伝え出来ませんが、お約束した2027年の数値目標は必ず達成するとともに、社内では構造改革の先を見据えて次の成長戦略を実行中です。
その中では「アクティブトレッド」および「センシングコア」をはじめとする競争力に富んだ新製品・サービスの市場投入に向けた投資を行うことで、営業キャッシュフローを更に多く積み増す体質へと変ぼうを遂げていきます。これを実現した後に、自己株買いを含めた株主還元にも注力していければと考えています。
なお、配当性向については、4割以上の水準を維持していく方針です。配当については単年度の当期利益の額だけで判断するのではなく、複数年のフリーキャッシュフローの推移を踏まえて、可能な限り安定配当に努めてまいります。

1株当たり配当金額

1株当たり配当金額