住友ゴムグループの事業活動で発生する温室効果ガスにより気候変動が深刻になれば、当社事業活動で最も影響を受けるのはタイヤの原材料であるゴムと製造工程で使用する水と考えています。この認識のもと、重要課題の要素である「気候変動」「資源循環」「生物資源」は独立した取り組みで対応するのではなく、相互に関連することを理解し、統合的にアプローチしていくことが必要と考え取り組みを進めています。
地球温暖化を中心とした気候変動は人類共通の課題であり、より良い地球環境を次世代へつないでいくために解決に取り組む必要があります。地球温暖化の原因であるCO2の発生や排出を削減することは、当社グループの持続的成長と、持続可能な環境・社会の実現に不可欠であり、重要な社会的責務と考えています。
グローバルにカーボンニュートラルの取り組みを推進するため、サステナビリティ推進委員会の下に「カーボンニュートラル部会」を設置し、海外拠点を含むすべての製造拠点にカーボンニュートラル推進担当者を配置しました。この部会では、各拠点の状況に応じて半年~1年に1回、スコープ1、2、3におけるカーボンニュートラルの進捗状況や各拠点の取り組みを共有する会議を実施しています。また、新技術の他社導入事例など、最新の情報を共有し、各拠点の取り組み計画の推進を図っています。
当社は、2021年6月、TCFDへの賛同を表明しました。気候変動が事業に与えるリスクと機会の両面に関して、ガバナンス、戦略、リスク管理、目標と指標の4つの基礎項目に基づいて情報開示を進めています。今後は1.5°Cシナリオを用いた分析を実施し、開示情報を更新していきます。
当社は、2030年に向けた温室効果ガス排出削減目標について、科学的知見と整合した目標であるとして、Science Based Targets Initiative (SBTi) よりSBT認定を受けました。
今回認定された当社の温室効果ガス排出削減目標は右記の通りです。
区分 | 2030年目標 |
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スコープ1、2
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55%削減(2017年比) |
スコープ3
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カテゴリ1:25%削減(2021年比) |
当社は、電力の再生可能エネルギー100%化を目指す企業で構成される国際的な環境イニシアチブ「RE100」への賛同を表明しました。
2050年までにスコープ1およびスコープ2においてカーボンニュートラルを達成するという目標の一環として、事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーとすることにコミットし、サステナビリティへの取り組みを一層強化してまいります。
住友ゴムグループでは2050年までにスコープ1、2におけるカーボンニュートラルを達成する目標を掲げ、各拠点で使用しているエネルギーの実態を踏まえたCO2排出量削減のシナリオを策定しています。サステナビリティ長期方針「はずむ未来チャレンジ2050」で当初設定した目標「2030年までに50%削減(2017年比)」は、各拠点の積極的な取り組みにより「55%削減」に引き上げることとしました。
さらに、2023年はスコープ3の2030年の削減目標も設定しました。(カテゴリ1、4、11、12)
2023年度は引き続きスコープ1、2の削減には、「省エネルギーの推進」「コージェネレーションシステムの拡大」「太陽光発電の導入」「再生可能エネルギー由来の電力調達」に取り組み、住友ゴムグループの生産活動におけるCO2排出量は国内工場および海外工場で2017年比27%削減しました
また、スコープ1の削減においては特に蒸気をつくる燃料のカーボンニュートラルが課題であることを認識しています。水素等の利用における技術の確立と展開を目指し、産学官で連携して、2030年以降にインフラの整備や技術革新の動向を注視しながら、水素等への燃料転換を含めた脱炭素化の実用化に取り組んでいきます。
当社グループのサプライチェーン全体が排出するGHG(温室効果ガス)の約9割を自社以外の排出(スコープ3)が占めており、スコープ3の削減が課題となっています。スコープ3の中でも、排出量の多いカテゴリ1、4、11、12の削減に取り組みます。
材料開発・調達
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生産
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物流
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販売・使用
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回収・リサイクル
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プロセス
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材料開発・調達
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物流
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販売・使用
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回収・リサイクル
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GHGプロトコルにおける
スコープ3カテゴリ |
カテゴリ1
(購入した製品・サービス) |
カテゴリ4
(輸送、配送(上流) |
カテゴリ11
(販売した製品の使用) |
カテゴリ12
(販売した製品の廃棄) |
サプライヤー説明会の実施やサプライヤ—様からの一次データの取得などを通じてサプライヤーエンゲージメントの強化を図るとともに、グリーン調達の促進とサステナブル原材料の活用で2030年には2021年比でCO2排出量の25%削減を目指します。
物流事業者に対して脱炭素に関する施策のヒアリングを実施し、よりCO2排出量の少ない輸送方法の検討・実施、輸出品の生産工場最寄港積みや倉庫間移管削減(輸送重量の低減)に取り組み、2030年には2021年比でCO2排出量の10%削減を目指します。
タイヤのライフサイクルにおけるCO2排出量は、車両走行時に燃料が燃焼することで排出されるものが約9割を占めます(間接使用段階排出)。タイヤの転がり抵抗を低減し、車両の燃費向上によるCO2排出量の削減に貢献します。
タイヤのロングライフ化、リトリッドタイヤの生産能力拡大と普及などを進めることで当社グループの事業活動全体でサーキュラーエコノミーを促進し、CO2排出量の削減に取り組みます。
2023年度は、最適生産配置や輸出品の生産工場最寄港積み等による輸送距離短縮に取り組みました。タイヤ輸送におけるCO2排出量は輸送重量の減少と輸送距離の短縮により、23千t-CO2となり前年度比6.1%減少しました。一方、原単位は生産量の減少等により軽荷での出荷が増えたことで積載率が悪化し、1.2%増加しました。
当社の主力タイヤ工場である福島県白河工場では、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業として支援を受け、2021年8月から2024年3月まで、次世代エネルギーとして期待されている水素の活用に向けた実証実験に取り組みました。また、水素エネルギーの導入に加えて、従業員駐車場へ太陽光発電パネルを導入することで、2023年1月には、水素エネルギーと太陽光発電を使用した日本初※1の製造時(スコープ1、2)カーボンニュートラルを達成した量産タイヤの生産を開始しました。
※ 1当社調べ(2023年1月時)
燃料の脱炭素化に向けて、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業として支援を受け、白河工場で水素活用の実証実験に取り組みました。当社の最先端の製造システムであるコンパクトな工程かつ非常に高性能なタイヤづくりを可能にする高精度メタルコア製造システム「NEO-T01 ネオ・ティーゼロワン」の加硫工程に、水素ボイラーで発生させた蒸気を供給しています。現在、水素については福島県内で調達していますが、今後は、再生可能エネルギーの電力で水素を製造するP2G(パワー・ツー・ガス)システムを利用し、工場内で水素を製造する取り組みを行っていきます。本事業はNEDOの助成を受け、山梨県と民間企業が開発した「小規模パッケージ化したP2Gシステム」の供給を受け、2025年4月から運転を開始します。これにより、自社内で水素の製造が可能となります。
2022年1月の中国2工場(常熟、湖南)での再生可能エネルギー由来電力への切り替えに引き続き、同年には中国工場(中山)、国内関係会社の一部、トルコ工場でも切り替えを実施しました。2023年は、ブラジル工場・神戸本社・東京本社(事務所のみ)・タイ工場・インドネシア工場でも再生可能エネルギー由来電力への切り替えを計画しています。さらにタイ工場ではコージェネレーションシステムの導入、世界最大の屋根置き太陽光発電設備の設置を計画しています。
従業員一人ひとりが環境問題に対する認識を深めて、環境保全の取り組みに積極的に参加するよう、環境意識啓発活動を実施しています。2022年は全社取組みとして、住友ゴムのホームページに「カーボンニュートラル広場」を開設し、カーボンニュートラルに関する取り組みや環境情報を動画形式で発信しています。さらに若手の意識改革として、将来の地球環境を考えてもらうため、新入社員を対象にカーボンニュートラルについて座談会を開催しています。