サステナビリティ担当役員メッセージ

住友ゴム工業TOP > サステナビリティ > サステナビリティ担当役員メッセージ
写真:國安 恭彰写真:國安 恭彰

サステナビリティと
経営戦略を紐づけ
社会課題解決に向けて
実行性を高めます。

取締役
常務執行役員
経営企画部長
兼 グローバル新拠点推進プロジェクト部長

國安 恭彰

住友ゴムの精神に息づく“サステナビリティ”

今まで経営戦略・DX推進を管掌してきましたが、2024年1月からサステナビリティ経営推進本部も併せて管轄することになりました。住友の事業の始まりは「銅精錬業」であり、それに伴う公害対策として植林等を行ってきました。「住友事業精神」にある「自利利他、公私一如」が示すように、サステナビリティ経営は当社事業のルーツだと考えています。
サステナビリティ経営を進める上では、一時的に財務面でマイナスの影響が出ることもあり、関係部署の理解・協力が必要な場合があります。短期的な財務面の影響を懸念して利益のみを追いかければ、社会課題への対応はおぼつきません。前述のような当社事業のルーツを忘れず、長期志向と社会的価値の創造の観点を持ち、サステナビリティ施策を経営戦略に組み込むことで、より効率的に、より迅速に諸施策を推進していきます。
具体的な施策は、2021年に策定した長期方針「はずむ未来チャレンジ2050」※に基づき進めています。推進体制は、取締役会直轄のサステナビリティ推進委員会の傘下にワーキンググループを設置し、カーボンニュートラルをはじめとする重要なテーマを扱う6つの部会で実行性を高めています。

※「Our Philosophy」に基づき、当社と社会が持続的に発展していくために、2050年を見据えたサステナビリティ長期方針

「脱炭素社会構築の追求」「循環型社会の形成」に向けた取り組み

環境分野における重要課題については「脱炭素社会構築の追求」「循環型社会の形成」の2つを設定しています。
「脱炭素社会構築の追求」では、事業活動を通じたCO2削減を軸にカーボンニュートラルの達成を目指しています。2030年におけるスコープ1(自社による直接排出)とスコープ2(他社から供給された電気や熱・蒸気の使用に伴う間接排出)の排出量を「2017年比50%減」という目標を掲げていましたが、その達成にめどがつき、目標値を「55%減」へ引き上げることを決定しました。これは当社グループの脱炭素化の取り組みが着実に進捗していることを表していると思います。また、カーボンニュートラルへの取り組みとして燃料の脱炭素化に向けて業界に先駆けた取り組みも進めています。福島県にある白河工場での水素エネルギーの利活用では、日本初※のスコープ1、2のカーボンニュートラルを達成したタイヤの量産を実現しました。今後も長期的な視点と先進性を大切にし、タイヤ製造工程における水素エネルギー利活用に挑戦していきます。具体的にはこれまで他社から調達してきた水素ガスを自社で生産できるよう、自社工場敷地内に水素製造装置を設置し生産に適用する実証実験を新たにスタートさせる計画です。

※ 当社調べ(2023年1月時点)

さらに、当社グループのCO2排出量の90%以上を占めるスコープ3(スコープ1、2以外の、他社やユーザーによる排出)については、2030年の削減目標を設定しました。定量的な目標設定とあわせ排出割合の高い、ユーザーによる使用時の排出(カテゴリ11)にはKPI目標を設定しました。これからのタイヤにとってより一層重要となる軽量化、耐摩耗性向上にむけた材料・設計・製造技術開発を推進し競争力を高めるとともに、CO2削減にも貢献します。「循環型社会の形成」については、タイヤ事業における循環型ビジネス(サーキュラーエコノミー)構想「TOWANOWA」の一環として、サステナブル原材料の採用比率を高めていくとともに、リトレッドタイヤの拡販に向けた社内プロジェクトも始動させています。日本では、使用済みタイヤの多くが熱源として再利用されている現状がありますので、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルにシフトすることで、省資源化やCO2削減にも貢献できると考えています。
2023年に「TOWANOWA」の実現に向けた2030年目標のKPIも設定し、着実に目標を達成できるよう取り組んでいます。

※ リトレッドタイヤ(更生タイヤ):走行により摩耗したトレッドゴム(路面と接する部分)を新しく貼り替えて、タイヤの機能を甦らせ再使用するタイヤのこと。

更生タイヤ全国協議会ウェブサイト

自然の恵みである天然ゴムを利用する企業として

自然資本である天然ゴムを製品の原材料に使用していることは、住友ゴムにおける事業リスクのひとつです。昨年、TNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures:自然関連財務情報開示タスクフォース)の提言に基づき、当社グループの事業が自然へ及ぼす影響の分析を行いました。世界には、天然ゴムのプランテーション拡大が森林破壊を引き起こし、ホットスポットになっている場所もあります。今回の分析では、特にタイヤ事業の自然への依存と影響が大きいことが確認されましたので、今後はより詳細な分析を進めるとともに、分析対象にスポーツ事業、産業品事業も加えていく計画です。
さらに、天然ゴムの調達については、農園での児童労働のリスクなどもあり、人権デューデリジェンスの取り組みが重要だと考えています。当社はサプライチェーンマネジメントの強化を推進する中で、調達ガイドラインにも人権尊重の方針を明確に示し、全てのサプライヤーにご理解いただき、実践してもらえるよう努めています。また、2021年1月からEcoVadis(エコバディス)社のモニタリングツールを活用して、人権、ガバナンス、環境の面からサプライヤーを評価する取り組みを開始しています。
天然ゴムのサプライチェーンは非常に複雑です。そのため、小規模農家を含む全ての生産者までトレーサビリティ※を担保することが課題となっています。「RubberWay®」などのツールも活用し、天然ゴムの調達をよりサステナブルなものへ進化させていきます。

※ 「製品がいつ、どこで、だれによって作られたのか」を明らかにするために製造や加工の工程、あるいは荷物の受発注などについて追跡記録を取ることおよび追跡可能な状態にすること

タイヤを扱う企業として

当社が認識するリスクに、クルマが走行する際にタイヤと道路面から出る粉じん(TRWP※(タイヤ・路面摩耗粉じん))の問題があります。今後、EVが増加しガソリン車が減っていき、また、EUにおける排ガスに対する規制(Euro7)などもあり、クルマの排気ガスは減少していく傾向にあります。そうなると、ブレーキパッドとタイヤと道路面から発生する粉じんの環境負荷低減の取り組みがより一層重要となります。これまでもタイヤの耐摩耗性を高めることでTRWP発生量の低減に取り組んできましたが、引き続き業界団体とも連携しながら取り組みを推進していきます。
当社としては、センシング技術によってタイヤの摩耗状態をモニタリングし、そのデータを開発へフィードバックしていくことで、環境負荷をより低減したタイヤを生み出していきます。

※ Tire and Road Wear Particles

技術開発のレベルを上げ、社会課題の解決に貢献

環境にやさしい製品をつくれば、社会課題がすべて解決するわけでもありません。例えば、タイヤに使用する原材料の量を減らし軽量化すれば、コストを抑えつつ環境性能を向上させることができます。他方、軽量化により走行時の騒音が大きくなる、軽量化のための浅溝化によりタイヤの寿命が短くなるといったネガティブな面も生じます。
これらの課題に対して、当社は過去に100%石油外天然資源タイヤ「ENASAVE100」の開発を行った経験があり、社会課題解決に向けたイノベーションの土壌は十分にあると考えています。さらに当社の強みであるセンシング技術の活用に加えて、様々なシミュレーションや解析のツールにも投資を行いながら技術開発のレベルを上げ、社会課題の解決に貢献したいと考えています。
現在、2035年に向けた長期戦略を立案するにあたり、社員にヒアリングを行っています。その際、10年後の当社の姿として「環境にやさしい企業でありたい」というコメントを多く耳にします。10年後、社員が思い描くような「環境にやさしい企業」へ進化を遂げるべく、中長期の目標を見据えて適時・適切な経営判断を行いながら、着実にゴールを目指していく所存です。