真のDE&Iとは個が輝き、最大限に能力を発揮すること
ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)という言葉は、いまや女性活躍だけにとどまらず、女性活躍はひとつの起点であり、そこから多様な人材が活躍できる土壌を作り、社員の成長と企業の成長をリンクさせていくことがゴールとされています。山本悟社長、其田真理社外取締役、アスリ・チョルパン社外監査役が当社のDE&Iのあり方と課題、取り組みを語りました。
当社には世界初、日本初を創り出してきた最先端のゴム技術があります。その先進性と挑戦する精神が今も脈々と受け継がれており、今後も新たな価値を創造していきたい。そして、その実現のためにはDE&Iの推進が重要だと認識しています。当社の「Our Philosophy」には「未来をひらくイノベーションで最高の安心とヨロコビをつくる。」というパーパスがあり、それを体現するために「多様な力をひとつに、共に成長し、変化をのりこえる会社になる。」というビジョンがあります。多様な人材が輝きを放ち、互いに尊重しながら力を結集することで、ステークホルダーの皆さまにも「最高の安心とヨロコビ」を提供できると確信しています。
この一年を振り返ると、まず、山本社長が強くコミットメントを出してくださいました。取締役会でもDE&Iをふまえた議論になることも増え、役員のなかでWHYからHOWへDE&Iのステージが変わってきている実感があります。男性の育児休業の取得、女性管理職の登用が進んできています。また、かねてからお願いしていた工場の労働環境の改善も始まりました。そして、「Be the Change」プロジェクトでは、これまであまり意思決定に関わってこなかった女性社員や若い社員がたくさん参加して、組織の壁を越えて意見を言える空気をつくってきました。このことは社員のモチベーションの向上はもちろん、収益への貢献にもつながったと思います。
今年度、社外役員の女性が3名になることも変化の一つに挙げられます。当社には2025年までに女性管理職比率を7%以上にするという目標がありますが、私はトップマネジメント層についても目標をつくるべきだと思っています。中長期的に課長、部長の人数と比率のターゲットをつくり、キャリアラダーを描き、それに対して何が必要かを分析する。社内外の多様なプログラムやサポートで女性社員をプロモートすることが必要だと感じています。
DE&I推進については担当チームを中心にしっかり進めてくれていて心強いです。私自身まだまだ学びながら推進している状況です。もっと学び、もっとリーダーシップをとれるようにならなければと感じています。
お二人がおっしゃるように、女性社員や若い社員の活躍はとても重要です。当社もD&IからDE&Iへと概念を変えてきました。Equity(公平性)の観点で重要課題としているのがやはり女性活躍推進です。なぜなら、最大母数のマイノリティである女性が活躍できる環境であれば、他のマイノリティや、マジョリティである男性にとっても働きやすく、活躍できる環境になるからです。
女性だけではなく、育児をする父親、病気を持っている人、親の介護を抱えている人などがさまざまな制度を使いながら生き生きと働ける会社を目指せるといいですね。今、全社で進めているDXを働きやすさや人材育成につなげていくことが重要だと思っています。
恥ずかしながら、まだ長時間労働が多い状況があります。誰もが働きやすい環境にするために、長時間労働の是正は急務です。そのためにも、DX化による業務の効率化・高度化を進める必要があります。DXによって時間効率を上げることができれば、ワークライフバランスも充実しますし、社員が本来やりたい業務に注力できるようになります。構造改革を仕上げる2025年に向けて、今、強い思いでDXを進めています。
昨年、其田さんとチョルパンさんには、役員を対象とした勉強会で意見交換する機会をいただきました。私はその中で、「育児はキャリアだ」という其田さんの言葉が強く印象に残っています。男性が育休を取得して育児に関わることで、パートナーシップの構築はもちろん、人や社会に対して寄り添う想像力が養われるのですね。
会社の仕事はどちらかといえばシングルタスクを効率的にやっていきますが、育児はいろいろなことに同時に対応しなければならないので、マルチタスクのマネジメント能力を培う場にもなりますね。
育休を取得してもらうためには、その人が不在でも業務が滞りなくできる環境も必要です。自分ひとりでできないときは支援してほしいと言えることが大切ではないでしょうか。人は完璧ではない、弱さもある。当社の従業員は真面目な方が多いので、なかなか“助けて”と言えない。そのためには他の人の仕事にも関心を持ち、チームで支え合う。助けを求めやすい環境がある。そのような組織はまさにわれわれが目指すありたい姿です。
誰かが不在でも業務がまわる環境、という点では、育休はある程度計画的ですからまだ融通が利きます。しかし、誰かが病気で倒れたり、親御さんを介護したりすることは予告なくやってきます。日本人は我慢強い方も多いですから、病気をしても仕事を頑張ったり、介護の場合は責任を感じて離職したりしてしまう。どちらの場合も本人にとっても労働現場にとっても不幸ですよね。これからの時代は、「人がいなくなる」ことを想定した組織対応力がないと勝ち抜いていけないと感じます。
女性活躍推進については、私も内閣府の「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」に参加しており、そこで「輝きさんを発掘し、女性が活躍できるキャリアの機会やワークライフバランスの環境を整え、さらなる輝きを引き出し、女性が活躍できる機会や環境を積極的に創出することで、その先に多様な人材が活躍できる企業風土、高い生産性や企業価値の向上を実現する企業につながると信じている」と宣言をしています。2021年からは「メンター制度」を導入し、現在は51名の社内メンターが活動しています。また、女性幹部候補を選抜し育成していく一環として、昨年は5名の女性部長が誕生しました。これも成果の一つでしょう。
社長はコミットメントだけでなく、実際にアクションを起こしてくださっていると感じています。先ほど述べたトップマネジメント層の育成についてお話しすると、昨年、京都大学で女性エグゼクティブリーダーのプログラムを立ち上げました。当社からも2名の女性社員が参加しています。そのことは高く評価できますし、私も貢献できたと思っています。
女性管理職比率については、課長から部長へ、そして役員になるまでに時間がかかります。そのスピードをあげるためには上から引っ張らないといけない。京都大学のプログラムや社内のメンター制度などさまざまなプログラムを活用していくことが必要だと思います。
当社グループがグローバル企業として発展していくためには、コア人材がよりグローバルな人材に成長していくことが必須です。昨年、ナショナルメンバーがCEOであるグループ企業のメンバーを日本に集め、「グローバルサミット」と称したミーティングを行いました。これはとても効果があり、これまで駐在員経由だったコミュニケーションがダイレクトになり、意思決定の質とスピードが上がりました。
山本社長がおっしゃるように外国籍社員のダイバーシティは進んでいます。その一方でインクルージョンについては、まだ見える化されていないように感じます。単に海外の子会社の社員ではなく、住友ゴムというワンカンパニーの社員だと思えることが大切ですね。そのためにも海外の人たちがもっと日本に来て、会議に参加する機会を設けてほしいです。英語力をレベルアップさせて直接コミュニケーションをとることは、グローバル企業にとって今や当たり前のことです。
私はグローバル企業には2つの側面があると思っています。一つは、当社の「Purpose」や「Vision」を海外の拠点に浸透させ、その特性を活かした形で発展させること。もう一つは、海外のマーケットやディールで確実に勝てる人材を育てることです。そこで重要になってくるのが多様性と組織力です。同じような人たちがいるグループでは同じような意見しか出ませんが、いろいろな人がいれば多様な意見が出ます。その中にこれからのヒントがあります。また、グローバル化ではリスク管理も非常に重要になってきます。日本企業は国際環境の中でこれまで経験したことのない危機に直面するでしょう。均質な組織は早くからリスクに気づき、検討して、早い決断をしていくのが苦手です。リスクを感じ取って早く対処する意味でも、多様な人材が活躍する集団であることは重要です。
DE&Iの推進を行うようになってから、社内の定例会議などで「いつも同じメンバーだな」「女性や若い人がいないな」と思うようになりました。強い組織をつくるためにも、こういった会議体への多様な人の出席や発表を後押しすることが重要だと感じています。社内の人材を知る機会にもなりますし、出席する人にとって大きな会議で経験を積む成長の場にもなります。
経験・属性というようなこれまでカテゴライズされた多様性は通過点と認識しています。真のDE&Iというのは、当社で働くすべての仲間たちが個として尊重され、能力を最大限に発揮して輝くことです。私は“輝きさん”を見つけて、仲間と共有したいのです。個々にスポットライトがあたり、仲間同士がその輝きを認識できる。そのための仕組みを整え、人を育て、風土を醸成することが経営の役割であり私の責任です。今日お二人と話をし、改めて決意しました。アンコンシャスバイアスに気づき、規律の上に立った心理的安全性をしっかり育成して、皆が自由闊達に行動できる職場づくりに積極的に取り組んでいきます。