住友ゴムグループの主力製品で使われているタイヤの原材料には、自然資本である天然ゴムが使われています。長期的かつ持続的に天然ゴムを調達するためには、QCD(Quality , Cost, Delivery)だけでなく、環境や人権などにも配慮し、持続可能な資源とすることが必要だと認識しています。天然ゴムの生産を持続可能なものにするために、サプライチェーンが抱える問題の解決に取り組み、これらを通じてお客様に安心とヨロコビを提供していきます。
当社グループは持続可能な天然ゴムのためのグローバルプラットフォーム(GPSNR※)に2018年9月に参画しました。天然ゴム生産地域での森林破壊による環境問題や、労働環境における人権問題などへの取り組みをさらに推進するため、2018年11月にGPSNRのポリシーフレームワークの内容を住友ゴムグループ「持続可能な天然ゴム(SNR)方針」に反映しました(2021年8月改定)。
この方針に基づきサプライチェーン上の皆様と連携した取り組みを積極的に推進し、天然ゴムの持続可能な調達を目指しています。
※ Global Platform for Sustainable Natural Rubber
当社グループではサステナビリティ経営推進本部を中心に、経営トップをはじめとした各部門と連携を図りながら、生物多様性の取組みを統合的に進めています。サステナビリティ経営を推進するにあたり、サステナビリティ担当役員を委員長、各部門担当役員を委員とする「サステナビリティ推進委員会」を年2回開催し、全社方針の徹底、マテリアリティの進捗確認等を実施しています。
サステナビリティ推進委員会傘下にワーキンググループとして部会を設置し、生物多様性部会は、そのひとつとして、部門横断の組織で取組みを進めています。
基本的な考え方である「持続可能な天然ゴム方針」と関連して、当社グループでは持続可能な調達を目指し、調達ガイドラインを制定しています。
EcoVadis評価については、サプライチェーンマネジメント:EcoVadisの項目をご参照ください。
世界の天然ゴム需要規模はこの40年間で約3倍に増えています。
これは世界的な人口増加と急激なモータリゼーションの広がりが大きな原因となっています。それに関連して、天然ゴムのサプライチェーン上で違法な森林伐採や土地収奪、人権侵害などの問題、森林破壊や違法伐採による生物多様性への悪影響などが懸念されています。
天然ゴムの生産は大規模なプランテーションではなく、スモールホルダーと呼ばれる小規模農家が約85%を占めています。天然ゴム農園、特に小規模農家においてゴムの収穫の知識・ノウハウや経験の不足による経済的な貧困や、生態系への負荷の増加といった問題が懸念されています。
また、天然ゴムの産地の多くは熱帯雨林地域に存在しており、数多くの希少な生物が暮らす豊かな土地に隣接しています。天然ゴム農園の拡大などは、こうした生物の暮らしに影響を与えることがあります。
天然ゴムのサプライチェーンは、全世界で約600万戸の小規模農家、プランテーション、ディーラー、加工業者など多数のステークホルダーで構成され、非常に複雑です。また、場合によっては地域や国境を越えた取引も行われています。そのため生産者から天然ゴム加工工場までの流通ルートを明らかにすること(トレーサビリティ※を確保すること)は非常に困難です。しかしながら、天然ゴムにおけるサプライチェーンを把握し、サプライチェーン上のリスク評価を実施することがますます重要になっています。そのうえで森林破壊や人権侵害などのリスクが少ない天然ゴムであることを確認し、調達していくことが求められてきています。またTNFDのフレームワークでもリスクと機会の分析を行っています。
※ 農作物や製品の検査のため、生産・加工・流通などの工程を追跡すること。
当社グループはサプライチェーンのステークホルダーや関係する業界団体などと協力し、サプライチェーンのマッピングなどの新しい技術や工夫を取り入れながら、環境破壊や人権侵害、その他のコンプライアンス違反に関与するリスクが高い地域を特定し、それらが地域住民等のステークホルダーに与える影響を的確に把握し、サプライチェーンにおけるトレーサビリティを高めることで、リスクの回避・低減に取り組んでまいります。
当社では持続可能な調達のため、天然ゴムのサプライチェーン上のリスク特定が非常に重要と考えています。そのため、天然ゴムに特化した環境・社会的リスク評価ツールである「RubberWay®」を2023年7月から導入しました。本ツールは、膨大なアンケートデータを統計解析して環境および社会問題のリスクの大きさを評価し、地図上に表示します。対象地域は主な天然ゴム産地の10か国で、評価項目には、森林破壊、水資源管理並びに強制労働や児童労働などが含まれます。
「RubberWay®」を効果的に活用することで、天然ゴムサプライチェーンのリスク評価・同定と高リスクの緩和施策の策定を進め、持続可能な天然ゴムの調達に寄与していきます。
※ ミシュラン、コンチネンタル、ソフトウエア開発会社SMAGが開発したアプリケーションソフト
当社グループでは経営層から現場部門に至るまで、天然ゴムの持続可能性に関するコミットメントを理解し、EUDRに確実に準拠できるように業界全体との連携、EUDR対応システム開発などの対応を進めています。また業界全体での取り組みとして、GPSNR(Global Platform for Sustainable Natural Rubber、持続可能な天然ゴムのためのグローバルプラットフォーム)における天然ゴム加工業者に向けたEUDR対応ガイドライン(Operational Guidance)の作成にも寄与しました。さらに天然ゴム加工業者への訪問・EUDR対応状況の監査(2025年:SRI-GのEUDR NR調達全サプライヤの内, 96%のサプライヤに対して実地監査を実施)やEUDRへのデューデリジエンス強化のために第三者機関を活用するなど、EUDR遵守に向けた取り組みを推進しております。
※ EU Regulation on Deforestation-free products
GPSNR※のKPIに関して、業界全体として取り組むべき課題を明確にするために天然ゴムサプライチェーンにおける全ステークホルダーとのコンセンサスを取りながら、業界内で継続して議論することが出来ました。引き続き、ステークホルダー、関係者と協力して、サステナブルな社会の実現に向けた活動を継続していきます。
EUDR対応に関して、特に天然ゴム加工業者と密なコミュニケーションを図ると共に、EUDRに対応するためのシステム開発を進め、EUDR遵守に向けて着実に取り組むことが出来ました。今後も柔軟に環境変化に対応するため、ステークホルダーの皆様と共に天然ゴムの持続可能性に関するガバナンスをさらに強化し、より一層取り組みを進めてまいります。
※ Global Platform for Sustainable Natural Rubber
| 2025年の目標 |
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| 2025年の実績 |
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| 2026年の目標 |
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| 中長期目標 |
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第三者評価機関(EcoVadis社)の活用については、サプライチェーンマネジメント:EcoVadis目標と実績の項目をご参照ください。
当社グループは、欧州森林破壊防止規制(EUDR)に即した森林破壊フリーのサプライチェーン構築への取組を推進するため、同規制への適合を支援するツール「SystemEarth」の活用を開始しました。SystemEarthを通じて、当社グループの天然ゴムサプライチェーン上流におけるEUDRへの準拠状況の検証を強化し,当社グループが扱うEUDR対象製品における森林破壊フリー及び合法性に対するデュー・ディリジェンスをより確固たるものとしています。
当社グループは伊藤忠商事株式会社が進める、天然ゴム業界の持続可能性向上を目指す取り組み「PROJECT TREE」※に参加し、天然ゴムのサプライチェーンの透明性および持続可能性向上への取り組みを加速しました。 本プロジェクトを通じて、小規模農家の持続可能性に対するリスクの把握・改善活動や収量増加のためのキャパシティビルディングなど、小規模農家の支援活動を推進します。また、ブロックチェーン技術を活用することでトレースしやすくし、トレーサビリティに優れた「TREE+(プラス)ゴム」の調達を通じて、欧州の森林破壊防止規則(EUDR)に対応していきます。
※伊藤忠商事株式会社が進めるトレーサビリティ及び持続可能性向上を目指すプロジェクト。専用のスマートフォンアプリで生産日時や位置情報などが記録され、原産地情報を追跡できる仕組み。
https://project-tree-natural-rubber.com/jp/
スミトモ・ラバー・シンガポールは、新型コロナウイルス感染拡大で一時中断していたインドネシア・ジャンビ州での『パイロットプロジェクト』を改めてキックオフしました。天然ゴムサプライヤーのハルシオン・アグリ社(シンガポール)と協働で、天然ゴム農家の現状や原料の流通経路調査、農家への研修、肥料の無償提供といった支援活動を行っています。これらの活動を通じ、小規模農家の「生の声」を聞きながら、天然ゴムの流通経路を把握し、供給リスクに対する評価を通じて、トレーサビリティと透明性向上への取り組みを推進しています。
当社グループはタイでのGPSNRのキャパシティビルディングプロジェクトへ支援・資金提供しています.本プロジェクトは2023年の開始以来、タイ東北部/北部のブンカーン県及びチェンライ県の農家に対し、農業生産工程管理(Good Agricultural Practice, GAP)に関する研修を実施してきました。また小規模農家の生計向上を目指し、優れた農業管理手法の普及、生産性の向上、ジェンダーインクルーシブの推進に取り組んでいます。
「Tire Technology Expo 2023」(ドイツ・ハノーバー)内で開かれた「Tire Technology International Awards for Innovation and Excellence」において当社の研究成果が評価され、以下の2部門で受賞しました。
東北大学、金沢大学、埼玉大学、理化学研究所と共同で、同じ酵素グループに属していて構造が類似しているトマト由来の酵素と、天然ゴムを合成する酵素の構造を比較することで、ゴムの長さに影響を及ぼす重要部位を発見しました。さらに、トマト由来酵素の重要部位を、天然ゴム合成酵素の重要部位と置き換えた改変酵素では、天然ゴムと同程度の長さのゴムを合成することを発見しました。さらに、この改変トマト由来酵素の研究を進め、自然界に存在しない構造のバイオポリマーの合成に成功しました。
埼玉大学、東北大学、金沢大学との共同研究により、人工膜(ナノディスク)を用いた酵素評価方法を発明しました。従来の天然由来の膜より精度の高い評価が可能になり、ナノディスク人工膜上での天然ゴム合成酵素の機能発現にも成功しました。
住友ゴムグループ「持続可能な天然ゴム(SNR)方針」に沿って、天然ゴムの持続可能な調達を目指した天然ゴムの収量改善への取り組みとして2024年3月よりタイのコンケン大学との共同研究を開始しました。現在、ゴムノキの苗木増殖で一般的に用いられているのは「接ぎ木」ですが、成長性や耐病性等の点において台木の影響を大きく受けます。一方で、当社が技術確立を進めているゴムノキの一部の組織を分離して試験管内で培養する「組織培養技術」では根と茎が同一の植物体となり、成長に有利になると考えられます。実際に、「組織培養」由来の苗は一般的な「接ぎ木」由来の苗と比較して、植え付け初期(1~2年)の成長が早いことが確認されています。
今回のコンケン大学との共同研究では、組織培養由来のゴムノキの苗と接ぎ木由来の苗の生育や葉の形の調査に加え、植物生理学的反応に関するデータを取得して違いを評価し、収量向上に繋がるメカニズムを解明する事を目的としています。本研究により天然ゴムの生産性向上を図り、持続可能な天然ゴム調達に向けた取り組みをさらに加速させていきます。
より環境に配慮した高性能な商品提供を目指すため、従来のパラゴムノキ由来の天然ゴムに代わる、新たな天然ゴム資源として「ロシアンタンポポ」に着目し、米ベンチャー企業であるKultevat社と共同研究を進めてきました。
ロシアンタンポポは温帯地域で栽培が可能なため、北米をはじめとする世界の多くの地域で栽培が可能です。
当社ではロシアンタンポポの共同研究により、天然資源の活用促進、原産地域の多様化により各製造拠点での安定的、効率的な調達を図り、より多くのお客様に環境負荷の少ない高性能タイヤを安定的にご提供できることが可能になると考えています。Japan Mobility Show2025にて、ロシアンタンポポゴムを一部配合したコンセプトタイヤを発表しました。