D&I 人材戦略対談

写真:井川 潔/其田 真理写真:井川 潔/其田 真理

当事者意識が高まっている今こそ、
改革をやり切る絶好の機会

執行役員
人事総務本部長
井川 潔

社外取締役其田 真理

井川

「Our Philosophy」を策定する前に、住友ゴムグループの拠り所であったのが「住友ゴムWAY」です。2009年の当社創業100周年に合わせて策定されたもので、当時、私はその事務局にいました。

人事担当者として当時を振り返ると、1995年の阪神淡路大震災後の業績悪化によって新卒採用が断続的となる時期があった一方、経営資源を東南アジアにシフトする戦略がヒットして、インドネシア、中国、タイなどに生産拠点を立ち上げ、販売拠点も拡大していきました。すると、全拠点で共通の理念のもと、仕事への向き合い方や進め方を浸透させることが難しくなっているという課題が浮かんできました。これは海外拠点だけでなく日本でも同様で、新卒採用を控えていた時期を経て、業績の回復とともに採用を急拡大したため、30代の中堅社員の次の年次の社員が新入社員といった職場もあるなど、なかなか組織立って同じ方向を向いて仕事を進めていくことが難しい状況にありました。 こうしたなか、100年の節目に企業として大切にしてきた事柄や学びを言語化して後世に伝えたいという想いから、「住友ゴムWAY」の策定がスタートしました。まず、当時のトップが語っている内容から共通する事柄を書き出す一方、部門長や中堅社員に理想とする仕事の進め方をヒアリングして重ね合わせ、4つの価値観のもとに、11の行動原則とし、仕事の型を見える化しました。

そこから時を重ねて2021年の「Our Philosophy」に至りますが、その背景にはグローバル化のさらなる進展があります。今や、住友ゴム工業の社員が約8,000名に対し、グループ全体では約4万名の社員がいます。グループにおいてマジョリティとなった海外の社員たちを束ねていくためには、より上位の概念で同じ方向を目指す企業の存在意義(パーパス)や、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)が欠かせません。日本でも、Z世代やミレニアル世代といわれる層はパーパスを非常に重視するといわれており、そこに海外・国内の差はありません。

私たちにとってD&Iの本質は、男女といった属性ではなく、考え方の多様性にあります。さまざまな考え方で構成されたチームが経営課題や経営戦略を実践していけば、経営の品質が上がります。D&Iと「Our Philosophy」は根底でつながっていて、多様であるからこそ「Our Philosophy」がなければ同じ方向を向いていくことができないと考えています。

其田

「住友ゴムWAY」から「Our Philosophy」に至る歴史的な背景や、考え方が醸成されてきたプロセスがよく理解できました。ここまでの道のりを含め住友ゴムの経営のベクトルについては、社員だけでなく、投資家の皆様にもぜひご理解いただきたいので、さまざまな方法で発信されると良いと思います。

「Our Philosophy」のスローガン「ゴムの先へ。はずむ未来へ。」は、従前にとらわれない、新たな挑戦というイメージがあります。これをイメージに終わらせるのではなく、どのように具体的な戦略に落とし込んでいくかが問われていると思います。さらに、具体的な行動がどのような結果につながったのか、それらがどのような影響をもたらしたかを組織として見える化していくことが肝心です。見える化によって一人ひとりのモチベーションが高まり、その取り組みが加速していくと思われますが、この点についてはいかがでしょうか。

井川

「未来をひらくイノベーションで、最高の安心とヨロコビをつくる。」というパーパスからはじまり、そのパーパスを達成するためにありたい姿としてVisionに「多様な力をひとつに、共に成長し、変化を乗り越える会社になる」とあります。、そのVisionこそがD&Iを推進していくための目指す姿です。そしてそのVisionを体現していくうえでの価値観「住友ゴムWAY」が「信用と確実」「挑戦」「相互尊重」の3つになります。現在は、「Our Philosophy」をしっかりと伝える段階にあります。新型コロナウイルスの影響をポジティブにとらえて、全社員を対象にオンラインのセミナーやイベントを行い、海外にも展開しています。浸透度合いは、3合目あたりでしょうか。

浸透させていくポイントは、通り一遍の説明をするのではなく、一人ひとりの社会人生活のなかで何かしら「Our Philosophy」「Vision」「住友ゴムWAY」に近しい体験をしたことがあるはずで、その体験とひもづけることで「Our Philosophy」を自分事として理解することだと思っています。組織単位でも、「Our Philosophy」や「住友ゴムWAY」を体現した実例のうち、どの事柄が部門の機能を高めたかなどを語り合う場を設けています。

さらに、仕事の型をどれだけ実践したか、「信用・確実」「挑戦」「相互信頼」の切り口で行動を評価し、きちんと実践している社員をきちんと処遇する人事評価システムに変更しました。実績と行動双方の視点をもって社員を抜てきし、そのような社員がさまざまな職場でリーダーシップを発揮していけば、住友ゴムグループは一挙に変わります。

其田

社長が率先して取り組んでいる「Be the Change」が、非常に大きな成果を生むのではないかと期待しています。大きなわくわくするような挑戦だけではなく、地道な改革で非常に有効な取り組みもたくさんあって心強く思っています。従来、経営幹部のテーブルに上がってこなかった取り組みに光があたることが、組織の活性化につながると確信しています。

「Our Philosophy」に至る道のりをお伺いしましたが、D&Iをスタートした2019年当時の状況はいかがでしたか。

井川

D&Iで身近な課題の一つである女性活躍でいうと、女性の採用自体はこれまでも力を入れてきました。しかし、定着に課題がありましたので、ライフイベントを迎えた社員の就業支援にしっかりと取り組むことからスタートしました。2019年から活動を深掘りしていく段階で分かったのは、制度や仕組みはあるものの、それらが女性社員、そして職場での活用につながっていないこと。まず、この改善と並行して、職場のマインドセットに取り組むこととしました。部課長への情報展開やさまざまな研修を通じて取り組んできた結果、理解・浸透や職場の後押しが進んできたと思います。

其田

「Our Philosophy」の中に「多様な力」や「相互尊重」という言葉が入り、位置付けが明確になりました。これによって社内の理解やルールづくりがより進みやすくなったのではないでしょうか。

井川

まさにその通りですね。特に、WAYの実践と人事評価との関連付けは外せないポイントとして、魂を込めて結び付けました。

BTCには、コスト削減や資金繰りの改善によって利益を生み出すような時間軸が比較的短めの取り組みと、組織健康度向上という時間軸の長い取り組みがあります。短期的な達成を目指す活動は非常に理解されやすのですが、組織健康度についてはすぐに成果が見えにくいがために「今なぜ」取り組まなければならないのかの理解が得られにくいものです。

私は、会社をアスリートに例えて説明しています。アスリートにとって短期の利益は、技を研くことです。これに対して長期目線でアスリートとして生き残っていくには、基礎体力をしっかりと付け、課題があればそれを克服しなければなりません。

BTCは、この2つの柱で企業活動を持続可能なものにし、社会にバリューを提供、還元することを目的としています。D&Iも同様に、個人の成長と会社の成長が共鳴することで経営の多様性向上へと資し、経営の品質を上げていくものであり、企業の連続性と社会への貢献という点でこれらすべてはリンクしています。

其田

組織健康度に対する皆さんの理解が進むと、はずみが付きますね。組織が健康でないと、利益を生むことにいつかは息切れしてきます。組織健康度が高まれば、より質の高い人材の獲得につながり、さらに企業としての基礎体力が高まります。社員の意識と制度が両輪になることが欠かせません。

井川

業績のさらなる成長のために今一歩の現状打破が必要な状況下で、一人ひとりの当事者意識、危機感が高まっています。今こそ、さまざまな改革をやり切る絶好の機会だと捉えています。

其田

自動車産業全体が大きな変革期にあって、さまざまなゲームチェンジが起きています。このような前例のない変化が、「Our Philosophy」や「住友事業精神」をベースとしたD&Iを体現するチャンスになるはずです。

井川

国内に限れば、キャリア採用が新卒採用を大きく上回っています。さまざまなキャリアやノウハウを持った人材が、当社の培ってきた強みや知見と融合することで、新たな価値を生み出していく過渡期にあると思っています。全く価値観の違う人材が入り、D&Iの観点からも経営そのものが格段に難易度を増すなか、社員の育成のためにも意図的にさまざまな経験を積める仕組みを構築しています。

一人ひとりの当事者意識、危機感が高まっている今こそ、さまざまな改革をやりきる絶好の機会だととらえています。

其田

PDCAでいえば、今はDOの段階にありますが、これがCHECK、ACTIONを経て、PLANに戻る時期が来ると思いますが、その点はいかがですか。

井川

組織健康度では、20項目ぐらいの質問があり、2021年は四半期に一度、全社員を対象にアンケートを行ってスコアリングをモニターしています。2022年は半期に一回になります。全社的には改善していますが、部署によるばらつきは依然として残っています。個別部署ごとに、改善点を見える化し、課題を直視して取り組みを進めていくことで、全体のスコアも上がっていくと考えています。

今まで、当社では専門性が高く、強く引っ張っていくリーダーが好まれてきたように思います。ジョブ型の時代といわれている中、もちろん、ある分野に特化する専門家としてその道でしっかり研鑽を積む人材の重要性は増していますが、一方で、マネジメント力が高く幅広い経験をしたことのあるジェネラリスト人材もバランス感覚のある経営人材として育成するといったように、人材戦略としてバランスをとっていく必要があると考えています。

今後の取り組み

女性やLGBT、外国籍従業員への各種取り組みを進めています。女性活躍は特に重点課題として認識しており、育児に関わる両立支援マニュアルの整備などキャリアの分断をフォローする仕組みを構築するとともに、女性リーダーの育成を目的として2021年からメンター制度を開設しました。社内のメンター育成のため、社外メンターによるメンタリングやスキル研修を実施した後、社内でメンティの相談を受けるというサイクルをつくり、徐々にメンターメンティ共に対象層を拡大していく計画です。
このほか、LGBTへの取り組みとしては、LGBTアライの基礎知識習得者の育成と、習得者のアライステッカー掲示によって働きやすい環境づくりを目指します。

女性管理職比率 女性採用比率 LGBTアライステッカー
取得率
メンター制度利用者数 外国籍社員向け
アンケートスコア
目標値 
2025年

7

目標値 
毎年

20

目標値 
2023年

10

目標値 
2025年

150

2030年目標

各スコアの改善