財務役員メッセージ

魅力ある製品を、
ベストコストで提供するために

写真:取締役 常務執行役員 大川直記

取締役常務執行役員大川 直記

中期計画の進捗と課題認識

2020年2月に発表した5カ年の中期計画では、売上収益1兆円以上、事業利益1,000億円以上、ROE10%以上、D/Eレシオ0.5倍以下という目標を掲げています。売上収益は順調に推移して2022年12月期に1兆円を超す見通しです。一方で、中期計画の策定直後にコロナ禍が起こり、事業環境が激変したため、収益性については、計画を下回る状況にあります。

特に事業利益については、計画通りに進捗した面もあった一方で、コロナ影響による急激な需要変動に加え、原材料費や海上運賃の高騰が生じ、事業構造に当初想定していた我々の計画との間でズレが生じました。具体的には、付加価値の高い高インチの乗用車用タイヤやSUV用タイヤの販売が想定通りに伸びた一方で、地産地消対応が遅れたことなどでコストが想定以上に増加したことが挙げられます。

当社はコロナ前から南アフリカや米国の工場を買収・取得してグローバル供給体制を整備するとともに、トルコ、ブラジル工場を含め生産能力を積極的に増強してきました。これにより、さまざまなお客様のニーズをカバーする豊富なラインアップと供給力を実現しました。一方で、コロナ禍でプロダクトミックスのアンマッチ、つまり製造場所と販売地域のズレによる運送費コストの増加や、高採算品への生産絞り込み遅れで減価償却費を含めたコスト負担増となったことが、利益面に影響したと考えています。現在このプロダクトミックスの改善を順次進めています。

中期計画の目標であるD/Eレシオ0.5倍以下達成に向けて

まずは稼ぐ力の再構築を優先し、設備投資の選別や収益性の改善を行っていきます。DXの推進を通じて一人当たりの生産性を上げることで人員を適切に配置し、新規事業に人員を配置するなど、人員を増やさずにアウトプットを拡大する取り組みを進めています。

D/Eレシオの改善の要諦は従来のP/Lの利益改善に加え、B/Sの運転資本の改善を加えることにあります。これにより総合的に資本効率を改善しようとしており、結果的に総資産が圧縮されて、D/Eレシオが改善されていきます。

従来は、売上を増やし利益を稼いでD/Eレシオを改善するという方針でした。今後は、量を稼ぐだけではなく、質の改善を加えて、魅力ある製品をベストコストで提供するために、B/S並びにキャッシュ・フロー重視の経営に転換していきます。

社内的には新たな指標を最終決定していませんが、個人的にはROIC経営を定着させていきたいと考えています。事業ごとのROICをしっかりと確認しつつ、成長性と収益性のバランスによってヒト・モノ・資金の経営資源の投入を判断していきます。

「Be the Change」でスタートした2つのタスクフォースを管掌

2020年からスタートした「Be the Change」プロジェクトの「利益基盤強化」では、10を超えるタスクフォースが立ち上がり、中期計画の達成を下支えする活動を進めています。そのうち私は、運転資本タスクフォースと投資判断・意思決定タスクフォースの2つを担当しています。

運転資本タスクフォースは、2022年末までに新たに300億円のキャッシュ・フローを創出するという目標を掲げています。具体的な取り組みとしては、棚卸資産圧縮に加えて、売掛債権の圧縮、買掛債務の適正化です。3つの施策それぞれにサブタスクフォースを立ち上げるとともに、タイヤ部門以外でもスポーツ、産業品、海外関係会社がそれぞれチームを組成し、各々の運転資本改善に動いています。今年3月末時点の成果としては、目標に対して順調に成果が積み上がっており、2022年末までに必ず目標を達成したいと、メンバー全員で前向きに取り組んでいます。

さらに今、財務戦略担当として考えているのは、運転資本の改善に加えて、ROIC改善に直接効果がある税引後利益の引き上げです。具体的にはグローバル税務対応の最適化を推進策の一つと位置付けています。例えば、本来日本で使える税務インセンティブを最大限活用することで、最適な税務戦略を実践し税引後利益を引き上げることです。本件は、税務チームとともに検討しています。さらに、資金チームと検討しているのが、資金調達の効率化と為替リスクの低減です。ROICの分子である税引後利益を最大化すべく、税務・財務の領域からもグローバルな税務戦略と資金戦略の双方を早急に検討・実施していきます。

投資判断・意思決定タスクフォースでは、設備投資の判断基準を、従来の回収期間法に加え、ROICと一番親和性が高い内部収益率(IRR:Internal Rate of Return)を追加し、そのハードルレートをどうするか、投資後の成果をどのようにトレースし、問題点を見える化して次の投資に活かしていくかなどを検討しています。このタスクフォースは、具体的な利益を出すというより、経営管理の基盤構築を進めていくチームになっています。その一環として、インターナル・カーボンプライシング(ICP)の単価についても社内で承認されており、カーボンニュートラルの促進にも貢献しています。

設備投資、減価償却の推移

グラフ:設備投資、減価償却の推移

2019年よりIFRS16号(リース)適用の影響を含みません

キャッシュ・フローの推移

グラフ:キャッシュ・フローの推移

株主還元方針について

当社として、株主還元策は経営方針の中でも最重要課題として常に認識しています。

考え方の一つとしては連結ベースで配当性向を見ながら、今期の業績の見通し、内部留保などを総合的に俯瞰しつつ、長期安定的にしっかり配当していくというのがベースにあります。また、必ずしもコミットメントではありませんが、決算発表の中で口頭では配当性向40%以上を一つのめどとお伝えしており、その基準に沿ってしっかり配当を長期継続的に、安定的に実施する考えはこれまでもこれからも変わりありません。

今の世の中の経営環境は、私たちの想像を絶するようなスピードで変化しています。そのスピードについていくだけではなく、他社に先んじていかないと差別化が難しい時代です。成果が出るまでに少し時間がかかるとは思いますが、ステークホルダーの皆様の期待に応えられるよう、これからもしっかり取り組んでまいります。

1株当たり配当金額(2022年時点)

グラフ:1株当たり配当金額

2019年度の配当性向は、減損損失を除くベースで48%