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タイヤ・路面摩耗粉じんに対する取り組み成果を国内外の学会で発表

  住友ゴム工業(株)は、自動車の走行時にタイヤと路面の摩擦によって発生する粉じん(TRWP:Tire and Road Wear Particles タイヤ・路面摩耗粉じん)に対する取り組み成果を、国内外の学会で発表しました。
 当社は、TRWPが環境に及ぼす影響の解明と低減を重要課題と認識し、タイヤの耐摩耗性を高めることでTRWP発生量の低減に取り組んできました。現在はTRWPの①発生、②拡散、③蓄積の3段階に着目して調査と研究を進めており、このたび「①発生」のメカニズムと「②拡散」の抑制に関わる研究について、発表しました。
 科学的データに基づくアプローチを通じて課題と真摯に向き合い、タイヤメーカーとしての社会的責任を果たすべく、環境負荷の低減に取り組んでまいります。


■TRWPとは
 自動車の走行時にタイヤと路面の摩擦によって発生する微細な粉じんで、主にタイヤのトレッド部材と道路舗装材からなる混合物です。タイヤは自動車部品で唯一路面と直接接触し、車両と乗員の荷重を支えながら、「走る(発進する)」「曲がる」「止まる」といった、安全な走行を支える基本的な機能を担っています。これらの機能を成立させるには、タイヤと路面の間に適切な摩擦が生じていることが不可欠となります。ただし、自動車の走行に伴いTRWPが①発生、環境中に②拡散、さらに③蓄積することで、環境にさまざまな影響を及ぼす可能性が指摘されています。

TRWPの発生・拡散・蓄積を示す(イメージ図)

■TRWPに対するアプローチ
 当社は、TRWPの発生から環境中での挙動までを包括的に捉え、外部の研究機関や企業と連携しながら、①発生、②拡散、③蓄積の各段階に焦点を当てた研究を進めています。

① 発生:TRWPの形成メカニズムの解明
 総合的な道路インフラソリューション企業であるニチレキグループ株式会社と協力し、TRWPの発生メカニズムに関する調査を進めています。2025年3月に開催された「Tire Technology Expo 2025」※1および8月に開催された「第30回舗装工学講演会」※2にて調査手法や構造など、形成メカニズムの解明に重要な情報を得たことを発表しました。引き続きメカニズムの解明に取り組み、タイヤと路面の両面からアプローチすることで、TRWPの発生を抑制する技術の開発を目指します。

② 拡散:TRWPの特性解明と拡散抑制の研究
 空気力学の専門家であるドイツ・オストファリア応用科学大学のFalk Klinge教授と共同で、走行中のタイヤ周辺に生じる空気の流れを利用したTRWP回収装置の開発に取り組んでいます。また、タイヤのゴム配合や走行条件と、回収されたTRWPの特性との関係を解析することで、拡散の低減につながる知見の確立を進めています。
 2025年6月に開催された「EuroBrake 2025」※3にて、Klinge教授との共同研究において、風洞実験によるタイヤ周辺の空気の流れ(エアロダイナミクス)の可視化に成功したことを発表しました。さらに、プロトタイプでの実験により、回収装置のコンセプトが実証できました。回収装置は二重構造になっており、外から風を送り込むことでタイヤと路面近くの風の流れを変えます。その力を利用し、高効率にTRWPを装置内に回収します。同様の回収装置は前例がなく、本研究における大きな成果と位置付けています。今回得られた知見を足がかりに、実用化に向けた取り組みを進めてまいります。

回収装置の有無で変化するタイヤ周辺の風の流れ(イメージ図)

③ 蓄積:環境中のTRWPとマイクロプラスチックの定量分析
 TRWPはマイクロプラスチックの一種として分類されることがあります。しかし、その物理的・化学的性質や環境中での挙動には大きな違いがあると考えられています。当社は、京都大学大学院の田中周平准教授と共同で、TRWPとマイクロプラスチックを区別して定量分析する手法を開発し、環境中におけるTRWPおよびマイクロプラスチックの存在量の把握を進めています。また、TRWPの拡散や蓄積の予防・抑制に向けた基礎的な知見の確立にも取り組んでいます。

■環境負荷低減に向けた取り組み
 2024年10月に発表した7つのマテリアリティ(重要課題)のうち、「気候変動」「循環型経済」「生物多様性」を環境に関わる項目として掲げています。中でも生物多様性については、「当社事業は自然資源や化学物質の利用および製品使用の過程で生態系に影響を与えるリスクがあります。生態系と自然資源の恩恵を将来世代につなげるため、事業による負の影響を小さくし、生物多様性の保全と回復に努めます」と明示しています。TRWPに関しても、このマテリアリティに基づき生物多様性への影響の最小化を目指します。

■今後に向けて
 TRWPは未解明な点が多く、特に環境への影響はさらなる研究と検証が求められています。当社はWBCSD※4傘下のTIP※5に発足当初より参画し、TRWPに関する調査研究、評価手法の確立、ステークホルダーとの対話などに取り組んでいます。また、一般社団法人日本自動車タイヤ協会(JATMA※6)や一般社団法人日本ゴム工業会(JRMA※7)の一員として、TRWPの評価に関するISO規格の策定にも関与しています。
 業界団体での活動に加え、今回の発表内容など独自の研究にも取り組んでいます。科学的データに基づくアプローチを通じてTRWPに関する課題と真摯に向き合い、環境負荷の低減と社会的責任の遂行に努めてまいります。

※1 2001年より欧州で開催されている、タイヤ製造等に関する技術発表および展示会。タイヤメーカーのほか、素材メーカーや公的研究機関などが参加し、研究成果の発表を行います。
※2公益社団法人土木学会が開催する研究発表会。大学、官公庁、道路建設会社、舗装材料メーカーなどが参加し、舗装工学に関する学術成果の発表や討議が行われます。
※3 欧州を中心に開催されている、ブレーキ技術に関する国際会議・展示会。自動車メーカーやブレーキ部品メーカー、研究機関などが参加し、技術発表や情報交換が行われます。
※4 WBCSD: The World Business Council for Sustainable Development /持続可能な開発のための世界経済人会議
※5 TIP: Tire Industry Project /グローバルタイヤメーカー10社からなる業界団体
※6 JATMA: The Japan Automobile Tyre Manufacturers Association, Inc.
※7 JRMA: The Japan Rubber Manufacturers Association


<ご参考>
住友ゴムグループのマテリアリティ:https://www.srigroup.co.jp/sustainability/materiality.html