東北大学と共同で硫黄の結合状態を3次元で可視化することに成功 ~ナノテラスを活用し、ミクロな材料内部の“化学状態”を ナノスケールで観察可能に~
2026年05月27日
DUNLOP(社名:住友ゴム工業(株)、社長:國安恭彰)は、東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センター 髙橋幸生教授と共同で、3GeV高輝度放射光施設NanoTerasu(ナノテラス)※1を活用し、リチウム硫黄電池材料に用いる硫黄系正極活物質における化学状態※2を三次元で可視化する事に成功しました。本技術の応用により、現在開発を進めているリチウム硫黄電池における反応・劣化メカニズムの解明が進み、さらなる性能向上が期待されます。
当社は2011年から産業技術総合研究所※3と共同で、リチウム硫黄電池(図1)に関する研究開発を進めてきました。リチウム硫黄電池は、リチウムイオン電池の6~7倍の理論容量が期待でき、軽量かつ安全性に優れていますが、充放電サイクル寿命が課題になっています。このサイクル寿命を向上させるには、硫黄系正極活物質(粒子)を詳細に観察し、粒子中の化学状態(特に化学結合状態)の分布を詳細に解析する必要があります。今回、ナノテラスのビームラインBL10U※4を用い、テンダーX線領域※5における硫黄K殻吸収端近傍※6の4つのX線エネルギー(硫黄の化学結合状態の違いに応じて吸収特性が変化する特徴的なX線エネルギー)を選択し、X線タイコグラフィ-計算機断層撮影※7を実施しました(図2)。
その結果、硫黄K殻吸収端におけるX線タイコグラフィCTにより、約80ナノメートル(1ナノメートルは1メートルの10億分の1)という極めて微細な単位で、硫黄系正極活物質内部における硫黄の化学結合状態を三次元で可視化することに成功しました。
さらに試料内部では、比較的均一な形状を示す球状領域(硫黄が集積した粒子状の領域)において硫黄–硫黄結合が多く存在する一方、形状が不均一な非球状領域(炭素成分と混在した不規則形状の領域)では炭素や酸素成分、ならびに硫黄–炭素結合が相対的に多いことが確認され、化学結合の空間的不均一性を明らかにしました。(図3)
今後、本研究成果を活用し、リチウム硫黄電池正極活物質における反応・劣化メカニズムの解明を通じて、充放電サイクル特性および充電容量のさらなる向上を目指します。
なお、本研究成果は、2026年5月に科学誌Scientific ReportsにArticle in Press(早期公開版)として掲載されました。
<ご参考>
■東北大学プレスリース(2026年5月27日)
「硫黄の結合状態を3次元で可視化-ミクロな材料内部の”化学状態”をナノスケールで観察-」
■次世代電池の実用化に向けた「硫黄系電池事業創出研究会」を設立(2024年4月1日)
※1 NanoTerasu:宮城県仙台市 東北大学青葉山新キャンパス内にて整備が進められ、2024年4月に稼働を開始した中型放射光施設。国の主体機関である国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(QST)と一般財団法人光科学イノベーションセンター(PhoSIC)を代表機関とする宮城県、仙台市、国立大学法人東北大学、一般社団法人東北経済連合会からなる地域パートナーで構成され、費用負担も含めた役割分担の元で整備が進められている。
※2 材料を構成する元素が、どのような化学結合や酸化状態、電子状態で存在しているかを示す状態。
※3 経済産業省所管の国立研究開発法人。産業技術に関する研究開発とその社会実装を担う日本最大級の公的研究機関。
※4 NanoTerasuに設置されたテンダーX線領域をカバーするビームライン。高いエネルギー分解能と空間分解能を活かし、材料内部の元素の化学状態解析に適したX線を提供する。
※5 軟X線と硬X線の中間に位置するX線エネルギー領域(おおよそ2~8 keV)。軽元素から中程度の元素までの化学状態を高感度に分析できる特長を持つ。
※6 X線のエネルギーを変化させたときに、硫黄原子が特定のエネルギーでX線を強く吸収する現象を指す。このエネルギー付近では、硫黄の電子状態や化学結合の違いによって吸収のされ方が変化するため、硫黄の化学状態を調べることができる。
※7 コヒーレントX線回折イメージングの手法のうちの一つ。試料にコヒーレントX線(波の揃ったX線)を照射する際、試料面上でX線照射領域が一部重複するように試料を二次元走査し、各走査点において回折強度パターンを取得する。得られた複数の回折強度パターンに対して位相回復計算を実行することで、一枚の試料像を取得する。 計算機断層撮影:試料をさまざまな角度から透過して得られた投影画像を、計算機によって再構成することで三次元構造を可視化する手法。試料内部の密度分布や構造情報を非破壊的に取得できる。
![]() |
当社は2011年から産業技術総合研究所※3と共同で、リチウム硫黄電池(図1)に関する研究開発を進めてきました。リチウム硫黄電池は、リチウムイオン電池の6~7倍の理論容量が期待でき、軽量かつ安全性に優れていますが、充放電サイクル寿命が課題になっています。このサイクル寿命を向上させるには、硫黄系正極活物質(粒子)を詳細に観察し、粒子中の化学状態(特に化学結合状態)の分布を詳細に解析する必要があります。今回、ナノテラスのビームラインBL10U※4を用い、テンダーX線領域※5における硫黄K殻吸収端近傍※6の4つのX線エネルギー(硫黄の化学結合状態の違いに応じて吸収特性が変化する特徴的なX線エネルギー)を選択し、X線タイコグラフィ-計算機断層撮影※7を実施しました(図2)。
![]() |
図1: リチウム硫黄電池の概略図 |
![]() |
図2: 硫黄K吸収端近傍におけるX線タイコグラフィCT測定の模式図 |
その結果、硫黄K殻吸収端におけるX線タイコグラフィCTにより、約80ナノメートル(1ナノメートルは1メートルの10億分の1)という極めて微細な単位で、硫黄系正極活物質内部における硫黄の化学結合状態を三次元で可視化することに成功しました。
さらに試料内部では、比較的均一な形状を示す球状領域(硫黄が集積した粒子状の領域)において硫黄–硫黄結合が多く存在する一方、形状が不均一な非球状領域(炭素成分と混在した不規則形状の領域)では炭素や酸素成分、ならびに硫黄–炭素結合が相対的に多いことが確認され、化学結合の空間的不均一性を明らかにしました。(図3)
![]() |
図3:硫黄が含まれる高分子材料粒子の断面像。電子密度、硫黄濃度、ならびに硫黄–炭素結合および硫黄–硫黄結合の硫黄の量に対応する指標の分布を示す。
粒子内部には、組成や化学状態に顕著な不均一性が存在することが分かる。 |
今後、本研究成果を活用し、リチウム硫黄電池正極活物質における反応・劣化メカニズムの解明を通じて、充放電サイクル特性および充電容量のさらなる向上を目指します。
なお、本研究成果は、2026年5月に科学誌Scientific ReportsにArticle in Press(早期公開版)として掲載されました。
|
当社は2026年より、コミュニケーションブランドをDUNLOPに統一しました。 |
![]() |
<ご参考>
■東北大学プレスリース(2026年5月27日)
「硫黄の結合状態を3次元で可視化-ミクロな材料内部の”化学状態”をナノスケールで観察-」
■次世代電池の実用化に向けた「硫黄系電池事業創出研究会」を設立(2024年4月1日)
※1 NanoTerasu:宮城県仙台市 東北大学青葉山新キャンパス内にて整備が進められ、2024年4月に稼働を開始した中型放射光施設。国の主体機関である国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(QST)と一般財団法人光科学イノベーションセンター(PhoSIC)を代表機関とする宮城県、仙台市、国立大学法人東北大学、一般社団法人東北経済連合会からなる地域パートナーで構成され、費用負担も含めた役割分担の元で整備が進められている。
※2 材料を構成する元素が、どのような化学結合や酸化状態、電子状態で存在しているかを示す状態。
※3 経済産業省所管の国立研究開発法人。産業技術に関する研究開発とその社会実装を担う日本最大級の公的研究機関。
※4 NanoTerasuに設置されたテンダーX線領域をカバーするビームライン。高いエネルギー分解能と空間分解能を活かし、材料内部の元素の化学状態解析に適したX線を提供する。
※5 軟X線と硬X線の中間に位置するX線エネルギー領域(おおよそ2~8 keV)。軽元素から中程度の元素までの化学状態を高感度に分析できる特長を持つ。
※6 X線のエネルギーを変化させたときに、硫黄原子が特定のエネルギーでX線を強く吸収する現象を指す。このエネルギー付近では、硫黄の電子状態や化学結合の違いによって吸収のされ方が変化するため、硫黄の化学状態を調べることができる。
※7 コヒーレントX線回折イメージングの手法のうちの一つ。試料にコヒーレントX線(波の揃ったX線)を照射する際、試料面上でX線照射領域が一部重複するように試料を二次元走査し、各走査点において回折強度パターンを取得する。得られた複数の回折強度パターンに対して位相回復計算を実行することで、一枚の試料像を取得する。 計算機断層撮影:試料をさまざまな角度から透過して得られた投影画像を、計算機によって再構成することで三次元構造を可視化する手法。試料内部の密度分布や構造情報を非破壊的に取得できる。




