PROJECT STORY04.

ゴルフクラブ開発プロジェクト
“ 12代目XXIO(ゼクシオ)
ゴルフクラブ ”

伝統と革新の両立

12代目の新技術を、
ゴルフの楽しさと喜びに。

ゴルフ、ラケットスポーツ、ウェルネスの3事業を展開するスポーツ事業本部。特にゴルフ事業は、1930年に国産初のゴルフボールを生産開始して以来、高品質のゴム製造技術を応用したゴルフボールなどを製造。XXIO(ゼクシオ)・SRIXON(スリクソン)・ClevelandGolf(クリーブランドゴルフ)の3つの商品ブランドを展開し、革新的な製品で数多くのプロ・アマチュアゴルファーをサポートしてきた。

2000年に誕生した「ゼクシオ」ブランドは、飛び、打ちやすさ、爽快な打球音、上質感のあるデザインで多くのゴルファーに支持される国内トップブランド。近年はグローバル展開も進み、20年以上に渡って代を重ね、2021年には12代目ゼクシオゴルフクラブが発売された。

ブランドのアイデンティティをベースに、どのように新技術を導入し、ゴルフの楽しさと喜びを提供したのか。12代目ゼクシオゴルフクラブに携わった5名に話を聞いた。

企画グローバル展開を見据えながら
シリーズコンセプトや事業計画を立案。

グローバル展開を見据えながらシリーズコンセプトや事業計画を立案。

S.H.

私の役割は、コンセプトやラインナップ、プロモーション戦略といった事業計画の立案。設計や販売企画からの提案・報告を判断しながら事業全体をリードしていくことです。近年はコロナ禍にあっても世界的にゴルフ人口が増加しています。このタイミングでゼクシオのリニューアルを手掛けることは、グローバル展開が進むゼクシオにとっては、さらなるチャンスだと感じました。 

事業計画は技術的な側面はもちろん、コスト、流通、販売など、さまざまな要素から検討します。新技術をはじめ、販売会社の営業や売場・ユーザーの声などを集約しながら、12代目ゼクシオで何をどう実現するのか、検討を進めました。

その中で大切にしたのは、ブランドの伝統と革新(新技術の導入)の両立を図ること。ゼクシオはこれまで「飛び、打ちやすさ、爽快な打球音」を謳い、新技術を導入しながら多くのゴルファーに「打って気持ちいい!」と感じていただくクラブを目指してきました。12代目でもそこは変えない。これが大前提として、いかに新しさ・ワクワク感をお客様に感じていただくかを考えました。そこで、コンセプトを「振りぬける安心感」「一球を打つたびにまた次の一球を打ちたくなるクラブ」と言語化して関連部署と共有。今回導入した「アクティブウイング」などの新技術も、このコンセプトから商品開発チームが提案してくれました。

ただ、飛距離やショットの安定性といった要素と異なり、打ちやすさや爽快感はゴルファーの感覚による部分が大きいもの。実際にクラブの開発が始まってからは、試作ができあがるたびに設計担当者やテスターによる試打を何度も行い、ゼクシオらしさを失っていないか、確認しながら進めました。一進一退を繰り返すこともありましたが、結果、誰もが「これぞ新しいゼクシオ」と認めるクラブへと進化。これまで以上にゴルフの楽しさと喜びを提供できるものになりました。

グローバル展開を見据えながらシリーズコンセプトや事業計画を立案。

商品開発ゼクシオの名に恥じないモデルを目指して
数え切れないほど重ねた試作と試打。

ゼクシオの名に恥じないモデルを目指して数え切れないほど重ねた試作と試打。

M.N.

商品開発チームは企画コンセプトや要求仕様に合わせたゴルフクラブの設計、試作の評価、量産化仕様の検討などを行っています。ゴルフクラブは主にヘッド、シャフト、グリップのパーツから成り、商品開発メンバーはドライバーのヘッド、アイアンのシャフトといったように各パーツの設計を担います。私はドライバーのヘッド設計と、パーツの組み合わせ方を決定するゴルフクラブ設計を担当しました。 

企画段階では、事前に取り組んできた技術要素を企画チームのコンセプトに合わせて提案。「飛び、打ちやすさ、爽快な打球音」といったゼクシオらしさと新技術を両立できるものとして、「アクティブウイング ※1」「リバウンドフレーム※2 」などの導入が決まりました。中・上級者向けブランドのスリクソンZXシリーズで採用している高反発技術「リバウンドフレーム」をアマチュアゴルファーでも気持ちよく飛距離を出せるようにゼクシオに応用する設計は難易度が高く、多くの時間を費やしました。

ゼクシオの名に恥じないモデルを目指して数え切れないほど重ねた試作と試打。

また、「アクティブウイング」とゼクシオらしい爽快な打球音をどう両立させるかも課題でした。最後の最後まで試作・試打を行い、微調整を重ねました。私自身も試打を繰り返し、試作モデルで「キーン」と高い金属音で気持ちよくボールを飛ばせた時、「よし、これで行ける!」と手応えを感じられました。

※1 スイング中にヘッドがブレる(トウダウンなど)大きな要因である「遠心力」。その逆方向に発生する「空力」をコントロールし、「遠心力」による悪影響を軽減することでヘッドのブレを抑制し、インパクトのばらつきを改善するテクノロジー。
※2「軟・剛・軟・剛」の4層構造がたわむエリアをより軟らかく、支点となるエリアをより硬くすることで反発性能が向上し、大きな飛距離を実現。

ゼクシオの名に恥じないモデルを目指して数え切れないほど重ねた試作と試打。

K.J.

入社後はシャフト設計、外注技術グループを経験。入社6年目にヘッド設計として最初に担当したのが12代目ゼクシオでした。実は私はゴルフの経験がほとんどありません。最初は細かな要求を正確に理解し、CADオペレーターに指示するだけでも難しいものでした。それでも、20年以上の実績を持つブランドのクオリティを下げるわけにはいきません。疑問を感じた時は自分から周りに意見を求め、M.N.さんをはじめ、オペレーターの方々にもサポートしていただきながら、開発を進めました。試打に立ち会う中、「飛びがいい」「振りやすい」といったテスターの声や数値の評価が出てくると、自分の設計にも自信が持てるように。ヘッドだけではなくクラブ全体のバランスをチーム内で検討・共有しながら進めることができ、ユーザーにも満足していただけるクラブに仕上げられました。

また、「アクティブウイング」はクラブを振り下ろす中で生じる空力をコントロールし、ヘッド挙動を安定させる画期的な技術で、12代目ゼクシオのセールスポイントの一つです。その設計においては、試打による計測やゴルファーの主観的な感覚で効果を確認するだけではなく、社内外の研究機関とのプロジェクトを新たに立ち上げ、空力シミュレーションや風洞実験などの論理的な検討を重ねて作り上げました。社風でもある“縦横の繋がり”や“論理的アプローチ”が最大限に発揮され、困難ながらも非常にやりがいのある取り組みでした。

量産化の問題 関係部署も、気持ちをひとつにしてゴールへ
ゼクシオの名に恥じないモデルを目指して数え切れないほど重ねた試作と試打。

M.Y.

M.N.さんやK.J.さんが設計したものを引き継ぎ、製造を担うパートナー企業と協力して目標性能を達成し、かつ量産できる仕様を確立することが私たち外注技術グループの役割です。12代目ゼクシオではクラブのフェアウェイウッドやアイアンのヘッド量産モデルを担当しました。ヘッドはさまざまな重さ・厚み・特性のある材料を溶接したり、研磨したりといった加工を行って作られます。設計やデザインの担当が求める性能・品質を担保した上で、パートナー企業が量産できる様に、一つずつ製造工程の確認を行い、調整しながら進めました。

その中で、ゼクシオブランドに対する社内の想い、こだわりを感じる機会が何度もありました。「社内基準をクリアできたし、これでいける」と思って上司に報告すると、「もっと上を目指そう」「ここまでこだわろう」とさらに高いレベルを求められたことも。たとえヘッドに一本の線を描くとしても、その品質にこだわること——それが、設計から受け継がれた想いや、ゼクシオを信頼してくださるユーザーの期待に応えることだと、あらためて理解しました。

量産化の問題 関係部署も、気持ちをひとつにしてゴールへ

特にアイアンのヘッドは種類が多く、細かな仕様に応えることにも時間を費やしました。私も妥協することなく、12代目ゼクシオに対する熱意をパートナー企業の担当者にも伝え、一丸となって取り組めたことで、ブランドの名に恥じないクラブを揃えることができました。

販売企画ゼクシオファンから新規ユーザーまで
ターゲットに訴求する3本柱の戦略を実践。

ゼクシオファンから新規ユーザーまでターゲットに訴求する3本柱の戦略を実践。

U.R.

商品を多くのゴルファーに届けるのが、販売会社であるダンロップスポーツマーケティングです。ゴルフショップへの営業活動だけでなく、ゴルファーと直接ふれあう試打会を開催するなど、どのように商品をアピールし、お届けするかを考え、実践しています。  


私はこれまで大手ゴルフショップを中心とした店舗営業を担当し、入社5年目から販売戦略の企画立案を担う販売企画部に所属しています。クラブの販売企画に初めて携わったのが12代目ゼクシオでした。ゼクシオは、2000年の発売以来、多くのゴルファーからご好評をいただいており、ゴルフクラブのフラッグシップ商品です。最初は大役を任され、重責を感じ、大きなプレッシャーもありました。しかし多くの人が携わり、精魂込めてでき上がった12代目ゼクシオを「ゴルフの楽しさとともに少しでも多くの人に届けたい!」という強い想いが日々大きくなり、決意を新たにしました。 

販売企画である私の役割は、企画チームの事業計画や目標を販売戦略として具体化し、実践していくことです。12代目ゼクシオでは興味関心の強化・体感強化・販売強化の3つの柱で戦略を立案しました。
興味関心の強化と体感強化については、発売前に全国約40箇所、約1500人が参加する試打会を企画しました。メーカーがここまで大規模な試打会を開催することは、業界でも稀です。ゴルフ人口が増えている今、買い替えだけではなく、ゼクシオに初めてふれる新規ユーザーの獲得も狙ったのです。また、今はゴルファーの多くがWEBやSNSで情報を検索する時代。YOUTUBEでの動画配信やWEB広告、インフルエンサーからのSNS発信といった、これまでにないプロモーションも進めました。

ゼクシオファンから新規ユーザーまでターゲットに訴求する3本柱の戦略を実践。

一方、店頭販売員の方がさまざまなゴルファーに接客ができるように、全国のショップ販売員向けのオンライン商品説明会を企画。私たちの熱意とともに、セールスポイントをわかりやすく伝えました。私自身も多くの販売店向けに説明会を行いましたが、各店舗の販売スタッフの方々の12代目ゼクシオへの期待の大きさを実感することができ、活発なディスカッションを重ねることで、充実した説明会となりました。

このような販売戦略を実践した結果、2021年12月に発売した12代目ゼクシオの出足は好調です。すでに準備を始めている第2・第3のプロモーションを展開して、より多くの人にゴルフの楽しさや喜びを届けていきたいと考えています。

今後の挑戦12代目ゼクシオゴルフクラブの経験を活かして
これから挑みたいこと。

12代目ゼクシオゴルフクラブの経験を活かしてこれから挑みたいこと。

M.N.

クラブ設計やヘッド設計は担当するたびに新たな気づきがあります。K.J.さんが担当した「アクティブウイング」を設計・評価する過程で得た視点は、これまでにないものでした。固定概念に縛られず、今後もさまざまなアプローチで設計に取り組んでいくことを心掛けたいと考えています。
かつて、あるゴルフクラブヘッドの設計思想がゴルフ協会のルールを改正して規制しまうほどの高性能を発揮したことがありました。一人の設計者として、そんなルールに影響を与えるような設計を手掛けるのが私の夢です。今もアイデアが浮かべばノートに書き記していますが、そんな小さな努力の積み重ねが、夢の実現への一歩だと考えています。

12代目ゼクシオゴルフクラブの経験を活かしてこれから挑みたいこと。

K.J.

「アクティブウイング」の設計・検証といった基幹技術にまで深く関わり、これまで以上にクラブ開発の幅広い領域を担当することができました。次のクラブ設計はもちろん、ゴルフボールやテニスラケットなど、他のジャンルの開発に携わる時も、この経験が活かせるはずです。
また、オンリーワンの製品を開発するために、古今東西の技術に目を光らせています。また、住友ゴムのさまざまな事業で培われた知見や技術を応用して、他社では真似のできない製品開発に取り組みたいと思います。

12代目ゼクシオゴルフクラブの経験を活かしてこれから挑みたいこと。

M.Y.

12代目ゼクシオでは、飽くなき品質へのこだわりなど、社内でのゼクシオ愛を何度も実感しました。同時に、それをパートナー企業の担当者に伝え、共有し、同じスタンスで取り組んでもらうことに難しさも感じました。これからも、社内外や世代間の考え方の違いを受け止め、理解した上で、目標を共有したり、意見交換を活発に行ったりと、開発陣に一体感を生み出すコミュニケーションに気を配っていきたいと思います。
また、コロナ禍の影響で在宅勤務となった日は、サンプルを直接見ることができない時もありましたが、チームのメンバーがフォローしてくれました。そんな住友ゴムの支えあいの風土も、しっかりと受け継いでいきたいですね。

12代目ゼクシオゴルフクラブの経験を活かしてこれから挑みたいこと。

U.R.

新しい商品を手にした瞬間、箱や袋を開ける瞬間ほど、ワクワクすることはないですよね。さらに、12代目ゼクシオでゴルフのスコアが上がった…といったハッピーを届けられたら、それに勝る喜びはありません。今後も12代目ゼクシオのプロモーションは続きますが、より多くの人にこのゴルフクラブとゴルフの魅力を伝えていきたいですね。それだけのポテンシャルがあるゴルフクラブなのは間違いありません。
私たちは直接ユーザーの声を聞くことができるポジション。その声はゴルフクラブの商品企画にも活かされます。この経験を活かし、これからもよりよいゴルフライフを多くの人に提供することが私の目標です。

12代目ゼクシオゴルフクラブの経験を活かしてこれから挑みたいこと。

S.H.

ゴルフクラブは機械で計測して得る定量的な評価だけではなく、実際に人が何度も打つことで得られる定性的な評価も重要視されます。12代目ゼクシオでは私もことあるごとに試打しましたが、試作モデルをテストするその瞬間には、特別なものがありました。試打結果だけではなく、一つひとつの意思決定をしていくにあたり、これがゼクシオブランドに相応しいものなのかと日々、試行錯誤。自分の判断が事業計画を大きく左右するからこそ、「伝統と革新の両立」という基準をぶれることなく持ち続けることで、ゼクシオとして誇れるラインナップを世に発表することができました。住友ゴムの「現地現物」の精神とともに、商品開発や販売企画といった多くの社員の熱意が、リレーのバトンのように、ユーザーの元までつながったからこそ実現できたものと言えます。
試打会などで、お客様から「気持ちよく飛ぶね」「ゼクシオの音だ」といった声を聞けると、12代目ゼクシオを通して、私も大好きなゴルフの魅力を提供できていることにうれしさを覚えます。それが最終製品を持つメーカーの仕事の醍醐味であり、次への大きなモチベーション。事業全体を動かす大きなやりがいを感じながら、これからも世の中に楽しさと喜びを提供していきます。